院長と麻酔科医の無痛分娩あれこれ

2021年1月の記事一覧

妊娠高血圧症候群と無痛分娩

2021年01月18日

妊娠中や産後の産褥期に血圧が上昇する妊娠高血圧症候群というものがあります。蛋白尿も出ることがあり、浮腫や頭痛などの症状が出ることもあります。
妊娠高血圧症候群の方は無痛分娩が有用であるということが分かっています。妊娠高血圧症候群では血管が収縮して高血圧になり、血管が収縮することで末梢の循環が悪くなり臓器などに悪影響が起こることがあります。無痛分娩は血管拡張作用があるため、収縮した血管を拡張し、臓器血流を改善する効果があるためです。特に妊娠子宮、胎盤なども同様で、赤ちゃんに対しても有効です。また、陣痛の痛みによって高くなった血圧がさらに上昇し、神経症状(視覚異常、痙攣)を呈したり、脳出血の原因となることもありますが、無痛分娩は痛みをコントロールするので、陣痛による血圧の上昇は起こらないため、これらのリスクを減らしてくれます。
妊娠高血圧症候群では時に血小板や凝固機能が低下することがあり、事前に採血し調べる必要があります。これらの極端に機能が低下している場合は硬膜外鎮痛や脊髄くも膜下鎮痛が困難な場合があります。
妊娠経過中は問題なくても入院してから血圧が高くなる方もいらっしゃいますし、出産後に血圧が高くなる方もいらっしゃいます。多くの人が硬膜外無痛分娩を受けていただくことで妊娠高血圧の重症化を防ぐことにつながるかもしれません。

『お酒が強い人は麻酔が効かない』は嘘

2021年01月11日

妊婦さんから『私お酒が強いので、麻酔が効きにくいんじゃないですか?』と聞かれることがあります。ご安心ください。お酒が強かろうが弱かろうが無痛分娩は効きます。
どうしてお酒が強い人は麻酔が効かないという考えが出てきたのでしょうか?
恐らくアルコールに対して耐性ができるから麻酔も効かなくなると考えるようになったのではないかと思います。アルコールを分解する過程と麻酔薬を分解する過程で共通する酵素(チトクロームP450)があり、アルコールを常飲してその酵素が増えることで、麻酔薬も代謝されやすくなると予想されます。しかし、アルコールを常飲する人は麻酔が効きやすい可能性があります。アルコールを長期間、ある程度飲んでいる場合、肝臓に障害が起こっている可能性があります。肝臓は薬物を代謝する場所なので、肝臓に障害が残っていると麻酔薬が残存することがあります。一部の薬剤は肝臓の悪い人では目が覚めるまでに時間を要することがあります。
これらのことは全身麻酔の場合の話であり、無痛分娩にはは当てはまりませんのでご安心下さい。いくつか理由を挙げてご説明します。
①妊娠中は飲酒を控える
まず妊娠中はほとんどの方がアルコールを飲まれていないので、酵素は麻酔薬をしっかり分解してくれます。
②硬膜外無痛分娩は直接作用部位である神経の近くに作用する
全身麻酔薬は点滴から血管の中に麻酔薬が入ります。脳で作用するわけですが、同時に肝臓などで代謝を受けていくので徐々に薬がなくなっていきます。硬膜外鎮痛は硬膜外腔という場所に麻酔薬が入りますが、硬膜外腔では代謝されないため、お酒が強い、弱いにかかわらず効果があります。硬膜外に入った麻酔薬は時間とともに血管に吸収され、肝臓などで代謝されますが、血管に吸収された麻酔薬は硬膜外鎮痛には影響を与えないので、無痛分娩の効果に影響を与えません。

というわけで少し難しい解説になってしまい申し訳ありません。
ただアルコールに弱い方はアルコール消毒で皮膚が発赤しますので、お申し出ください。

麻酔科医の資格について

2021年01月04日

本日は麻酔科医の資格についてご紹介いたします。
麻酔科医の資格には主に『麻酔科標榜医』『麻酔科認定医』『麻酔科専門医』『麻酔科指導医』『機関専門医』『専門研修指導医』があります。
『麻酔科標榜医』は日本国家が認めたライセンスで、国家資格となります。2年の麻酔科研修施設での研修を経て取得することができます。他に一定の手術麻酔を経験することでも取得できます。標榜医は1回取得すると、永年継続されます。
『麻酔科認定医』は前述した『麻酔科標榜医』を取得すると、日本麻酔科学会より認定されます。標榜医とは異なり5年ごとに更新が必要です。更新には学会参加や発表などしっかり麻酔学を学んでることと、臨床経験が必要となります。
『麻酔科専門医』は認定医取得後5年以上麻酔科医として働き、専門医試験を受けます。筆記試験、実技試験、口頭試問からなり、3日間にわたって行われます。専門医試験を受ける前に一定の基準があります。ACLS(心肺蘇生)の資格を持っていること、学会参加や発表を行っていること、臨床を行っていることなどです。臨床も心臓麻酔、小児麻酔、帝王切開、胸部外科、脳外科の麻酔を一定数以上行うことを必要としています。
『麻酔科指導医』は麻酔科専門医取得後5年以上麻酔科医として働き、一定の指導症例数の基準を満たすと認定されます。専門医のときのような試験はありません。
『機関専門医』と『専門研修指導医』は最近できたもので、前述の『麻酔科認定医』『麻酔科専門医』『麻酔科指導医』は日本麻酔科学会が認定していましたが、この2つは日本専門医機構が認定しています。『機関専門医』は『麻酔科専門医』よりも学会参加、発表や勉強会などの必要単位数が多くなります。
今このコラムを書いている私は、今現在麻酔科指導医ですが、近い症例麻酔科専門医になります。現在は指導ではなく、東京マザーズクリニックで常勤医として勤務しているためです。
麻酔科関連の資格には主にこれらのものがありますが、他に『心臓麻酔専門医』や『小児麻酔専門医』があります。ちなみに現在は『産科麻酔専門医』はありません。
麻酔科医として、日々の診療を通し、皆様が安全に過ごせるように精進してまいります。

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