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院長と麻酔科医の無痛分娩あれこれ

麻酔についての記事一覧

麻酔が効いているかはどうやって調べる?

2020年10月26日

無痛分娩で使用される硬膜外鎮痛(麻酔)は全身の痛みを取るのではなく、腹部を中心とする痛みを取り除きます。麻酔が効いて痛みがない場所と、麻酔が効かずに痛みを感じる場所がでてきます。顔、胸の上部、腕は麻酔は効きません(意図的に必要ない場所には効かせません)。胸の下部、腹部、脚やお尻には効きます。
麻酔が効いていれば痛みが取れるわけですが、十分腹部に麻酔が効いているかをどのように我々は判断しているのでしょうか?
神経にはいろいろな神経があります。痛みの神経(痛覚)、運動神経、温度を感じる神経(温度角)、触っている感覚が分かる神経(触覚)、自律神経などがあります。
これらの神経はそれぞれの神経によって麻酔が効きやすい神経、効きにくい神経があります。
順番に並べると以下のようになります。

触覚>運動神経>温度覚=痛覚>自律神経
効きにくい効きやすい
(より詳しい説明は次回『効きやすい神経効きにくい神経』参照してください)

これをみると、痛覚と温度感覚は麻酔の効きやすさが同じです。麻酔の範囲を確認するために痛みを与える方法(ピンプリック法)があります。いろいろな場所に痛みを与えてどこが効いているか効いていないかを見極める方法なのですが、効いていない場所は痛いので、我々は冷たいアイスノンを感じるかどうかで麻酔の範囲を確認します。『冷たい』=『効いていない』、『冷たくない』=『効いている』ということになります。この方法により、十分無痛分娩に必要な範囲の麻酔が効いていれば痛みが取れているという判断になります。 無痛分娩中は何度も冷たいアイスノンを当てて確認を行いますが、それは麻酔の範囲を確認しているからです。痛みを取るために必要なことではありますが、それだけでなく、過剰に効いていないかどうかも分かります。全脊椎麻酔のように麻酔が広がりすぎていないかどうかを知るためにも必要な方法で、安全のためにも行っています。
お臍のあたりまで麻酔が効いていれば、痛みを感じることはなくなるでしょう。麻酔が効きすぎていないかどうかの確認のために、胸のあたりにアイスノンを当てさせていただくこともあります。麻酔が広がりすぎている場合は血圧低下の原因になったり、脊髄くも膜下麻酔になっているサインかもしれません。安全の確認のためですのでご協力ください。

硬膜外鎮痛は無痛分娩だけでなく様々な場所で利用されている

2020年09月04日

当院で行われている無痛分娩は硬膜外鎮痛(麻酔)と呼ばれる方法ですが、この方法は無痛分娩にのみ使用されているわけではありません。
私が麻酔科医になった時に初めて見た硬膜外麻酔は手術を受ける患者さまに対して行われていました。陣痛の痛みをゼロにまでしてくれる方法なので、術後の痛みにも有効です。特に呼吸器外科や上腹部手術(胃癌や食道癌など)ではとても有効です。これらの手術(呼吸器外科や上腹部手術)は呼吸によって傷口の痛みが出てしまうため、痛みがあることで呼吸すら辛く、また痰を出すことにも痛みが出るので痰が出し辛く、呼吸器合併症が増加してしまいます。硬膜外麻酔を行い痛みを取り除くことでこれらの合併症を軽減させます。ほかにも腸管を動かす作用もあり、術後の腸閉塞の頻度を下げたり、他にも血栓予防効果や、心血管系への優位性を示すデータがあります。呼吸器外科、上腹部手術にも下腹部手術(帝王切開)、股関節や下肢手術でも使用されますし、ペインクリニック外来では腰痛などの治療にも行われます。
無痛分娩だけでなく、様々な医療現場で幅広く使用されている硬膜外鎮痛についてご紹介させていただきました。

CSEAとは?

2018年02月21日

CSEAとは日本語で脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔と訳されます。脊髄くも膜下鎮痛を併用した硬膜外鎮痛ということです。硬膜外鎮痛は以前にご説明しましたが、併用する脊髄くも膜下鎮痛について本日はご紹介します。
脊髄神経は脊髄液という液体の中に浮いており、脊髄液はくも膜という膜によって覆われているということを以前に説明しました。くも膜の外側に硬膜外が存在するわけですが、くも膜の内側(下)に鎮痛薬を入れるので、くも膜下鎮痛といいます。

脊髄くも膜下鎮痛の特徴は硬膜外鎮痛よりも神経に近いためより強く、早く効きます。デメリットは管を入れることができないので、持続的な投与を行うことができません。ですので脊髄くも膜下鎮痛を行う場合は初めに刺す時か、硬膜外鎮痛では十分な麻酔ができない時に限られます。
穿刺は初めの時でしたら硬膜外カテーテル挿入のための針と同じもので脊髄くも膜下鎮痛を行えますので、簡便です。
脊髄くも膜下麻酔単独での無痛分娩は1900年ころより報告がありますが、適応が限られていました。CSEAが分娩鎮痛に用いられたのは1992年Abouleishらによって報告され、硬膜外鎮痛と比較し歴史はまだ浅いです。
硬膜外鎮痛よりもより神経に近くなるため、怖いと思われる方もいらっしゃると思いますが、ほとんどの方がCSEAを使用せずに硬膜外鎮痛だけで無痛分娩が可能です。妊婦さんと相談し、希望した時のみに行います。また、実際には図のように太い神経がドーンとあるわけではなく、我々が穿刺する場所はすだれ状の細い神経があるため、神経を傷つけることも滅多にありません。
いずれにしてもCSEAは当院では行うこともありますが、必要なことはそれほど多くなく、陣痛発来で入院して、すぐに痛みを取りたいケースか、十分に痛みがとり切れないケースに限られます。


文責 院長

硬膜外無痛分娩とは?

2017年10月12日

当院で無痛分娩の際に使用される麻酔方法は硬膜外麻酔(鎮痛)というものになります。硬膜外麻酔は背骨の中にある硬膜という膜の外側に痛み止めを入れる方法になります。1900年ころより硬膜外麻酔は行われ、より確実により安全に進化してきました。硬膜外麻酔の歴史は無痛分娩の歴史の一部となっています。硬膜外麻酔のない時代の無痛分娩は麻酔薬を全身投与する方法でありましたが、この硬膜外麻酔の登場により、より安全に痛みを取ることができるようになりました。
硬膜外麻酔の説明には硬膜外が何かを説明する必要があります。脊髄神経は皆さんご存知でしょうか?例えばあなたが氷を触ったときに、『冷たい』、『固い』などの感覚を皮膚の神経が感じ、その感覚を背骨の中にある脊髄神経に電気信号で伝えます。脊髄神経に入ってきた信号はそこから脳に伝わり、『冷たい』、『固い』という感覚をあなたが脳で認識するわけです。一方で、『手を動かす』ときは、脳から脊髄神経に信号が伝わり、脊髄神経から手を動かす神経に伝わり筋肉を収縮させて動かします。脊髄神経はこういった信号の伝導の一部を担っています。この脊髄神経は脊髄液という液体の中に浮いています。例えば、豆腐は柔らかく簡単に崩れてしまうため水の中に浮かべることによって、崩れにくくして売られています。脳や脊髄神経も同じように水(脊髄液)の中に浮かべることで外の衝撃から守る作用があります。さらに脊髄液はくも膜という膜によって覆われています。くも膜には硬膜という硬い膜がくっついています。この硬膜の外側が『硬膜外腔』と呼ばれ、この場所に痛み止めを入れると、近くにある神経に作用します。『硬膜外腔』の外側には靭帯や骨があります。

図:脊髄周辺
(背中は下側になり、針は背中から入れる)

痛み止めの薬が神経に作用すると信号の伝導が遮断されるため、『痛い』『冷たい』といった感覚が脳に伝わらなくなり、痛みを感じなくなります。また『動かす』という神経も遮断されると動きづらくなることもあります。『触られている』という感覚は他の神経よりも薬が効きづらいため、麻酔中も触れられている感覚は残ります。麻酔の効きやすさは『痛み』>『動かす』>『触られている』になります。
無痛分娩では『痛み』は取り除き、少しだけ『動かす』の神経も遮断します。痛みは一切何も感じませんが、触られている感覚は残るため、麻酔と聞くと何も感じないと想像される方もいらっしゃいますが、お腹の張り(痛みではなく、収縮する感覚)を感じたり、脚を動かしたりすることができます。
脊髄はとても大切な神経なので、背骨によって守られています。皆さんの背中の真ん中を触ってみてください。頭からお尻まで骨がポツンポツンと触れることができると思います。背骨はこれらの骨がいくつも重なって構成されています。硬膜外麻酔はこの骨と骨の間に針を挿入し、硬膜外腔まで細い管を入れます。細い管を入れることができれば針は抜いて管だけ残してテープで固定します。テープで固定すれば仰向けになっても細い管がつぶれることはありません。必要な時に細い管から薬を入れて痛みをコントロールします。
全身に麻酔薬を投与する方法とは異なり硬膜外腔という小さなスペースに薬剤を入れるので、少量で十分な効果を発揮します。少量であるため、赤ちゃんへの移行もほんのわずかであり、問題にならないと考えられます。
『背中に注射をするのが不安』、『神経の近くに針を刺すことが不安』と話される妊婦さんもいらっしゃいます。痛みの程度は人にもよりますが、多くの方は思ったほど痛くはなかったと仰っていただいております。我々も痛みを取り除くための麻酔が皆様の負担にならないように心がけております。また、神経の近くに針を刺すことに関して、技術力がとても必要になります。経験と知識が豊富で、日頃より扱いに慣れている医師が行うことにより、合併症を極力防ぐことができます。多くの方が当院で無痛分娩を選ばれていることから、我々は日々硬膜外麻酔を行っており、日々安全な痛みのコントロールを行っています。
ご不明な点や不安に思う方は遠慮なくお申し出くださればまた改めてご説明いたします。
 

文責 院長

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