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院長と麻酔科医の無痛分娩あれこれ

無痛分娩機材の新規格による医療安全

2021年02月01日

無痛分娩の針やシリンジなどが今年から新規格になりました。
この変更は医療安全のためなのですが、まず去年まではどうなっていたのかを説明します。
去年までは静脈注射や筋肉注射する針やシリンジと、無痛分娩(硬膜外鎮痛、脊髄くも膜下鎮痛)のために使用する針やシリンジは同じものが使用されていました。そのため当院ではありませんが、『無痛分娩用の薬を誤って静脈注射してしまいました』『静脈用の薬を間違って硬膜外に入れてしまいました』という報告が散見されました。そこで、今年から日本中で麻酔の薬は麻酔専用の針とシリンジで行うようになりました。麻酔用のシリンジで吸った局所麻酔薬は静脈には入れられず、静脈用のシリンジで吸った薬剤は、硬膜外に投与できなくなりました。シリンジを接続する形が異なるため、接続ができず、薬が入れられなくなったのです。
無痛分娩で使用する薬剤は静脈注射禁止の薬剤もあり、このような取り組みは医療安全としてとても重要なこととなります。
無痛分娩は安全である前提で行う必要があります。安全に配慮された無痛分娩を受けていただけるように機材も新しく進化し、安心してお産に臨んでいただければ幸いです。

無痛分娩で出血は増えるのか?

2021年01月25日

以前無痛分娩で出産された方が産後に出血が多くなり、ご家族の方から『無痛分娩が原因で出血が多くなったのですか?』というご質問がありました。その方の出血の原因は無痛分娩とは全く異なる理由で出血が起こったのですが、無痛分娩と出血が関連していると思われている方もいらっしゃると思います。今回はこのことについてお話をしたいと思います。
無痛分娩を行った人と行わなかった人の出血量を比較したいところですが、当院は圧倒的に無痛分娩率が高く、無痛分娩を行わなかった方がほとんどいないので、同時期の比較をするために、私が以前働いていた他の病院のデータで比べてみたいと思います。そして比較するうえで器械分娩を行ったかどうかが影響するので、そこも比べてみましょう。まず器械分娩なしの場合
分娩方法 無痛分娩有/無 器械分娩有/無 平均出血量(ml)
経腟分娩 あり(18例)) なし 329
なし(24例) なし 395
このように出血量は無痛分娩の有無であまり変わらず、むしろ平均出血量は無痛分娩のほうが少なくなっています。
次に器械分娩有の場合
分娩方法 無痛分娩有/無 器械分娩有/無 平均出血量(ml)
経腟分娩 あり(20例) あり 514
なし(6例) あり 401
器械分娩だけで比べると無痛分娩を行った場合出血量が多くなる傾向にあります。ちなみに出血が多くなった無痛分娩の方でも輸血や特別な処置が必要になることはありませんでした。
上記のように器械分娩では出血量は多くなる傾向にあるので、当院では早期から止血剤などを用いて出血量が多くならないように取り組んでおります。
無痛分娩をしたから出血が増えるのではなく、無痛分娩をした場合出血が多くなる人もいるので、しっかりと予防と治療に取り組むことが大切だと考えております。

妊娠高血圧症候群と無痛分娩

2021年01月18日

妊娠中や産後の産褥期に血圧が上昇する妊娠高血圧症候群というものがあります。蛋白尿も出ることがあり、浮腫や頭痛などの症状が出ることもあります。
妊娠高血圧症候群の方は無痛分娩が有用であるということが分かっています。妊娠高血圧症候群では血管が収縮して高血圧になり、血管が収縮することで末梢の循環が悪くなり臓器などに悪影響が起こることがあります。無痛分娩は血管拡張作用があるため、収縮した血管を拡張し、臓器血流を改善する効果があるためです。特に妊娠子宮、胎盤なども同様で、赤ちゃんに対しても有効です。また、陣痛の痛みによって高くなった血圧がさらに上昇し、神経症状(視覚異常、痙攣)を呈したり、脳出血の原因となることもありますが、無痛分娩は痛みをコントロールするので、陣痛による血圧の上昇は起こらないため、これらのリスクを減らしてくれます。
妊娠高血圧症候群では時に血小板や凝固機能が低下することがあり、事前に採血し調べる必要があります。これらの極端に機能が低下している場合は硬膜外鎮痛や脊髄くも膜下鎮痛が困難な場合があります。
妊娠経過中は問題なくても入院してから血圧が高くなる方もいらっしゃいますし、出産後に血圧が高くなる方もいらっしゃいます。多くの人が硬膜外無痛分娩を受けていただくことで妊娠高血圧の重症化を防ぐことにつながるかもしれません。

『お酒が強い人は麻酔が効かない』は嘘

2021年01月11日

妊婦さんから『私お酒が強いので、麻酔が効きにくいんじゃないですか?』と聞かれることがあります。ご安心ください。お酒が強かろうが弱かろうが無痛分娩は効きます。
どうしてお酒が強い人は麻酔が効かないという考えが出てきたのでしょうか?
恐らくアルコールに対して耐性ができるから麻酔も効かなくなると考えるようになったのではないかと思います。アルコールを分解する過程と麻酔薬を分解する過程で共通する酵素(チトクロームP450)があり、アルコールを常飲してその酵素が増えることで、麻酔薬も代謝されやすくなると予想されます。しかし、アルコールを常飲する人は麻酔が効きやすい可能性があります。アルコールを長期間、ある程度飲んでいる場合、肝臓に障害が起こっている可能性があります。肝臓は薬物を代謝する場所なので、肝臓に障害が残っていると麻酔薬が残存することがあります。一部の薬剤は肝臓の悪い人では目が覚めるまでに時間を要することがあります。
これらのことは全身麻酔の場合の話であり、無痛分娩にはは当てはまりませんのでご安心下さい。いくつか理由を挙げてご説明します。
①妊娠中は飲酒を控える
まず妊娠中はほとんどの方がアルコールを飲まれていないので、酵素は麻酔薬をしっかり分解してくれます。
②硬膜外無痛分娩は直接作用部位である神経の近くに作用する
全身麻酔薬は点滴から血管の中に麻酔薬が入ります。脳で作用するわけですが、同時に肝臓などで代謝を受けていくので徐々に薬がなくなっていきます。硬膜外鎮痛は硬膜外腔という場所に麻酔薬が入りますが、硬膜外腔では代謝されないため、お酒が強い、弱いにかかわらず効果があります。硬膜外に入った麻酔薬は時間とともに血管に吸収され、肝臓などで代謝されますが、血管に吸収された麻酔薬は硬膜外鎮痛には影響を与えないので、無痛分娩の効果に影響を与えません。

というわけで少し難しい解説になってしまい申し訳ありません。
ただアルコールに弱い方はアルコール消毒で皮膚が発赤しますので、お申し出ください。

麻酔科医の資格について

2021年01月04日

本日は麻酔科医の資格についてご紹介いたします。
麻酔科医の資格には主に『麻酔科標榜医』『麻酔科認定医』『麻酔科専門医』『麻酔科指導医』『機関専門医』『専門研修指導医』があります。
『麻酔科標榜医』は日本国家が認めたライセンスで、国家資格となります。2年の麻酔科研修施設での研修を経て取得することができます。他に一定の手術麻酔を経験することでも取得できます。標榜医は1回取得すると、永年継続されます。
『麻酔科認定医』は前述した『麻酔科標榜医』を取得すると、日本麻酔科学会より認定されます。標榜医とは異なり5年ごとに更新が必要です。更新には学会参加や発表などしっかり麻酔学を学んでることと、臨床経験が必要となります。
『麻酔科専門医』は認定医取得後5年以上麻酔科医として働き、専門医試験を受けます。筆記試験、実技試験、口頭試問からなり、3日間にわたって行われます。専門医試験を受ける前に一定の基準があります。ACLS(心肺蘇生)の資格を持っていること、学会参加や発表を行っていること、臨床を行っていることなどです。臨床も心臓麻酔、小児麻酔、帝王切開、胸部外科、脳外科の麻酔を一定数以上行うことを必要としています。
『麻酔科指導医』は麻酔科専門医取得後5年以上麻酔科医として働き、一定の指導症例数の基準を満たすと認定されます。専門医のときのような試験はありません。
『機関専門医』と『専門研修指導医』は最近できたもので、前述の『麻酔科認定医』『麻酔科専門医』『麻酔科指導医』は日本麻酔科学会が認定していましたが、この2つは日本専門医機構が認定しています。『機関専門医』は『麻酔科専門医』よりも学会参加、発表や勉強会などの必要単位数が多くなります。
今このコラムを書いている私は、今現在麻酔科指導医ですが、近い症例麻酔科専門医になります。現在は指導ではなく、東京マザーズクリニックで常勤医として勤務しているためです。
麻酔科関連の資格には主にこれらのものがありますが、他に『心臓麻酔専門医』や『小児麻酔専門医』があります。ちなみに現在は『産科麻酔専門医』はありません。
麻酔科医として、日々の診療を通し、皆様が安全に過ごせるように精進してまいります。

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