院長と麻酔科医の無痛分娩あれこれ

無痛分娩についての記事一覧

無痛分娩を行っている施設は多いのか?

2022年01月18日

前回は無痛分娩率について触れましたが、今回は無痛分娩を行っている施設数に関してお話ししたいと思います。
2017年の調査で、無痛分娩を行わない病院は行う病院の約1.7倍、無痛分娩を行わない診療所は行う診療所の約1.9倍となっております。日本では半分以上の病院、クリニックでは無痛分娩を行っていないことがわかりました。
アメリカでは9割以上の病院で無痛分娩を行うことができていることを比較しても、まだまだ施設数は少ないことがわかります。
それでも以前に比べると増えてきたように感じますが、首都圏では増えていても、地方ではまだ無痛分娩が少ないなどの地域差があるのかもしれません。

現在日本でどれほど無痛分娩が行われているか?

2022年01月11日

昔に比べて今は無痛分娩を行う妊婦さんも増えていますし、行っている施設(病院、診療所)も増えています。
無痛分娩率の最近の調査では平成26年4.6%(病院4.3%診療所5.0%)、27年5.5%(病院5.0%診療所5.9%)、28年6.1%(病院5.5%診療所6.6%)となっています。
無痛分娩は病院よりも診療所(クリニック)などで行うほうが多いという結果となりました。病院との差は1%弱とわずかではありますが、いずれの年も診療所のほうが無痛分娩を行っていることがわかります。
日本の無痛分娩を支えているのは診療所であり、だからこそ安全で適切な無痛分娩を行う必要があると思っており、日々取り組んでおります。

硬膜外カテーテル挿入後は背中をベッドにつけても大丈夫

2021年10月18日

当院での無痛分娩は硬膜外無痛分娩というもので、腰の真ん中あたりに注射をしてカテーテルという細い管を入れます。この細い管は直径1mmほどで、柔らかくしなりがあり、釣り糸のように強固です。イメージだと太い釣り糸のような感じでとらえてください。
中が空洞になっており、薬が流れるようになっています。
背中に管が入った状態で、ベッドに背中を付けても問題ありません。管がつぶれることもありませんし、管がどんどん入ってしまうこともありません。普通に過ごしていただいて大丈夫です。しっかり固定しておりますので、よほどのことがなければ抜けることもありません。
最初は管が入っていることが怖いかもしれませんが、すぐに慣れますので、何も心配なく出産に臨めます。

側弯症で無痛分娩ができなかった方は当院にはいません

2021年10月11日

今まで何回か無痛分娩ができない原因の一つに側弯症が強い方を挙げてきました。そのせいか、無痛ができるか否か不安な顔で外来に来られる方がいらっしゃいます。今まで何人も側弯症の方々を無痛分娩してきましたが、無痛分娩ができなかった方はいらっしゃいませんでした。来院されている側弯症の方々はそれほど大きな側弯でない場合や、胸椎の側弯はあっても腰椎の側弯はほとんどない場合などもあり、問題なく無痛分娩ができています。
ですので、側弯症の方でも無痛分娩は多くの方は可能です。
ただし、事前に診察や、診察の結果によっては画像検査をお願いするかもしれませんの、その際はご協力下さい。

硬膜外カテーテル挿入後は背中をベッドにつけても大丈夫

2021年10月04日

当院での無痛分娩は硬膜外無痛分娩というもので、腰の真ん中あたりに注射をしてカテーテルという細い管を入れます。この細い管は直径1mmほどで、柔らかくしなりがあり、釣り糸のように強固です。イメージだと釣り糸のような感じでしょうか。
中が空洞になっており、薬が通れるようになっています。
背中に管が入った状態でも、ベッドに背中を付けても問題ありません。管がつぶれることもありませんし、管がどんどん入ってしまうこともありません。普通に過ごしていただいて大丈夫です。
最初は管が入っていることが怖いかもしれませんが、すぐに慣れますので、何も心配なく出産に臨めます。

新型コロナウイルスと無痛分娩

2021年09月20日

新型コロナウイルスの蔓延に様々な変化が起こりました。医療も「あれはいけない」「これは推奨」など我々の仕事にも影響は起こっています。
さて、コロナ禍において、無痛分娩を行うことは何かデメリットはあるのでしょうか?
現在のデータではコロナ禍において無痛分娩を行ってはいけない理由はありません。
むしろ無痛分娩は行ったほうが良いとされています。理由としまして
①もし帝王切開になっても全身麻酔を回避できる可能性が高まる
②努責によるエアロゾルを減少させる
といったことが海外の学会から報告されています。
今後、更なるコロナの波が押し寄せようとも無痛分娩ができないということはありませんのでご安心ください。

アナフィラキシーショックの初期症状

2021年09月06日

アナフィラキシーショックは体に入った薬剤に対して免疫の過剰反応により様々な症状が起こります。アナフィラキシーショックの症状として、皮膚症状(発赤)、呼吸症状(息が苦しい、低酸素血症、ヒューヒューする)、血圧低下(耳鳴り、めまい、気分不快、頭がくらくらする、ぼーっとする、あくび)、消化器症状(下痢、嘔吐)があります。これもすべて認められることはめったにないため、一つでも該当する症状があった場合はスタッフに伝えましょう。
新型コロナワクチンでもアナフィラキシーショックの問題が心配されています。無痛分娩だけでなく、アナフィラキシーショックは食物や薬剤を接種すれば起こる可能性はあるため、知っていて損はありません。

初期症状を見逃さない

2021年08月23日

最近ある妊婦さんの無痛分娩を行いました。出産の痛みも怖いけれども、無痛分娩に対する不安もありました。痛みがあったので、お薬を入れるとスーッと痛みが消えました。笑顔になっているかと思いきや、不安顔で「息が止まったりしませんか?」と問いかけられました。私は「大丈夫ですよ。問題ありませんよ。」と答えました。重篤な合併症で起こる初期症状をお伝えし、その初期症状がないことを理解されると安堵されました。
無痛分娩の事故の報道を読んで心配しての質問だと思います。無痛分娩の事故は無痛分娩を受ける多くの妊婦さんが懸念していることです。
これらの事故や重篤な合併症は突然命にかかわる状態になるのではなく、徐々に起こってきます。初期症状を見逃さないことが大切になります。
最も初期の症状は血圧や心電図などで医師や助産師が見つけるものではなく、妊婦さん自身の自覚症状が最も早く表れます。
この後3回に分けて重篤な合併症(局所麻酔中毒、アナフィラキシーショック、全脊椎麻酔)の初期症状をお伝えします。

無痛分娩マニュアル

2021年08月16日

医療安全の面からみてマニュアルは必須のものとなっています。
マニュアル化を行うことでどのスタッフも均一化された正しい医療を提供することができます。
当院にも無痛分娩マニュアルがあり、そのマニュアルにのっとって無痛分娩を管理します。適切な投与量、副作用の確認方法、痛みがあるときの対応など細かく記載されており、無痛分娩経験の有無にかかわらず、新人スタッフはこのマニュアルで無痛分娩を勉強することとなります。
マニュアルがあることで、もし間違えて通常と異なる方法で管理していた場合、他の人が気づくことができます。統一された方法で行うことで、この管理方法を熟知することができ、慣れることで余裕が生まれ、広い視野や、適切なサービスも行うことができます。
 
どなた様も区別なく、最高の無痛分娩になるように対応いたします。

産後も痛くないように

2021年06月30日

無痛分娩は分娩中の痛みをゼロまで取ります。無痛分娩は硬膜外鎮痛という方法で痛みを取り除きますが、この硬膜外鎮痛は産後の痛みには効き辛く、効かせようと強い薬を入れると歩くことが困難になってしまうためです。
そのため産後の痛み止めは無痛分娩とは異なる方法を行います。
まず痛くなってから鎮痛薬を内服するのではなく、定期的に鎮痛薬を内服することで、痛くないような状態を作って起き、それでも痛い場合はさらに鎮痛薬を使います。この際の鎮痛薬は定期的に内服する鎮痛薬とは異なります。同じ鎮痛薬を使用し、薬の量が多くなると副作用も懸念されるため、異なる作用機序、異なる種類の鎮痛薬を用いて、痛みを取ります。
また、産後の痛みが強いことが予想される場合には半日~1日ほど効果のある痛み止めを分娩後に硬膜外カテーテルから投与することで、早期の除痛を行います。

血液凝固異常とは

2021年06月14日

前回血小板が少なくなると出血しやすくなるというお話をしました。血液を固める成分には血小板以外に凝固因子というものがあります。凝固因子が低下している場合も硬膜外腔で出血を起こす可能性があり、無痛分娩ができなくなります。不足しているかどうかは、外来で採血を行って確認しております。
凝固因子も血小板と同じように血液を固める重要な成分で、ほとんどの方は正常なのですが、凝固異常の代表的なものに血友病、ビタミンK不足、肝障害、出血などがあります。
事前に調べて、合併症のない無痛分娩にしましょう。

血小板減少

2021年06月05日

妊娠中に採血を行いますが、採血項目の中で、血小板というものがあります。血小板は止血の働きがあり、これが少ないと出血が止まりません。
硬膜外無痛分娩を行う場合、血小板の数字が8万/μl以上である必要があります(正常値下限は15万/μ)。8万/μl未満の場合、針を刺した後に、硬膜外腔で出血が止まらなくなり、血の塊(血腫)ができてしまうかもしれません。
妊娠により一時的に低下することはありますが、何らかの病気で低下していることもあるため、事前に調べて問題がないことを確認したうえで無痛分娩を行います。

二分脊椎とは

2021年05月29日

脊椎は首は7個、胸は12個、腰は5個、お尻は5個の骨から成り立っています。これら1つ1つの骨が連なり、脊椎を形成しています。
背中の真ん中を首からお尻まで縦に脊椎があるので、痩せている方では硬い骨が触れると思います。この硬い骨によって脊髄神経が守られているわけです。非常に稀にこの骨が一部分だけ無いことがあります。その場合、注意して硬膜外カテーテルを挿入する必要があります。
麻酔科外来では皆様に背中の診察をさせていただいており、事前にある程度このような二分脊椎などがないか評価させていただいております。事前にある程度評価をして、少しでも疑わしい場合は、画像診断をさせていただき、安全に無痛分娩を受けていただきたいと思っております。
もし旅行に行こうとした場合(コロナ禍で今はなかなか行けませんが…)、事前にどのように行くか、いった後にどこに行こうかなど調べると思います。行ってみて、実は休みだったり、電車がなかったでは困ってしまいます。無痛分娩も同じで、事前に知っておくことで、安全でスムーズな鎮痛が可能となりますので、ご協力をお願いします。

側彎症とは

2021年05月22日

側彎症(側湾症)とは脊椎が背骨が左右に曲がっている状態です。一般的には女性に多く、思春期の頃に発症するため、性ホルモンが関与していると考えられています。
通常でも脊椎は前後に彎曲があり、首は前に、胸は後ろに、腰は前に、お尻は後ろに彎曲しています。これはヒトに特徴的なもので、2足歩行になった結果、脊椎を彎曲させ、重い頭を支えたり、様々な動きに対応できるようになったと考えれられています。
側彎症では脊椎が少し回転してしまうため、前後だけでなく、左右に彎曲が起こり、肩に高さに左右差ができたりします。前屈して背中に左右差がある場合も疑われます。
日常で大きく困ることもなく、軽症な方はご本人は全く気付かずに健康診断のレントゲンで初めて指摘される方もいらっしゃいます。
ほとんどの方は問題なく無痛分娩ができますが、事前にわかっていると、脊椎の回転に応じたカテーテル挿入をいたしますので、もし事前にわかっている場合はご申告お願いします。

脊椎の異常が疑われた場合

2021年05月03日

なるべく多くの妊婦様に安全に無痛分娩を受けていただくため、当院では無痛分娩外来を行っております。診察で下記のような脊椎の異常が疑われた場合、必要に応じて事前に脊椎の評価のために画像診断をさせていただくことがあります。
①側弯症
②二分脊椎
③脊椎術後 など
これらがあっても問題なく無痛分娩ができることもありますので、一律に無痛分娩不可とは致しません。しかしこれらが十分に評価されずに硬膜外無痛分娩を行うと、合併症などが起こる可能性もありますので、ご協力をお願いいたします。

無痛分娩ができない(受けられない)妊婦さん

2021年04月12日

無痛分娩外来をしていて、診察が終わったときに『無痛分娩ができるとわかって安心しました』と安堵されて帰る方は少なくありません。無痛分娩ができるかどうか心配な方は結構いるようです。
確かに無痛分娩できると思って入院してみたら、できなかったと思うと大変残念ですよね。無痛分娩外来では無痛分娩の説明だけではなく、無痛分娩が可能かどうかも診察しております。無痛分娩ができないときとは
①血液をサラサラにする薬を飲んでいる
→妊娠中に内服されていても、出産前に内服していなければ問題ありません
②血液を固める成分が少ない
→採血で確認いたします
③脊椎の手術や大きな変形
→側弯症は可能なことが多いです。脊椎手術も胸椎などの場合はできることがあります。
④穿刺部の感染
⑤一部の神経疾患
⑥出産経過が早すぎて間に合わない場合
⑦その他
になります。
当院で無痛分娩ができずに、他院に紹介させていただくことはほとんどありませんので、あまりご心配される必要はありません。
なるべきご希望に添えるように(無痛分娩ができるように)いたしたいと考えております。ご協力よろしくお願いします。

無痛分娩と計画分娩

2021年04月05日

当院では24時間対応で無痛分娩を行っておりますが、計画分娩を基本としております。自然に陣痛がおこるのを待つという考え方もできますが、計画分娩にもメリットがあることをご案内させていただいております。
計画分娩のメリット
①日中の分娩になる
朝から分娩を進行させることで、日中に陣痛、分娩を行うことができます。日中のほうが、医療スタッフも多く、手厚い医療を受けることができるためです。
②家族の都合がつきやすい
あらかじめ出産される日が決まっていれば、ご家族のお休みも確保しやすいですし、上のお子様がいる場合は預けやすいとおもいます。
③無痛分娩が確実にできる
無痛分娩ができないケースの一つに、非常に稀ですが、ご自宅で陣痛が起こったのちに、急激な分娩の進行に伴い、麻酔が間に合わずに出産となることがあります。このようなケースを避けるためには事前に入院し、いつでも痛み止めを入れられる体制にしていくことが大切です。
 
計画分娩により、余裕のある出産になるとお考えいただければと思います。

無痛分娩での学会活動について

2021年03月29日

当院の医師は日々の診療だけではなく、学会活動にも力を入れて、研究という分野でも尽力しております。
無痛分娩や帝王切開などに関連する産科麻酔関連では産科麻酔学会、周産期麻酔学会があります。もちろん産科医は産科医関連の学会(例:日本産婦人科学会など)に、麻酔科医は麻酔科関連の学会(例:日本麻酔科学会など)に加盟、参加、発表を行っておりますが、無痛分娩や帝王切開など産科麻酔の分野でも学会活動を行っております。
現在はコロナ禍ということもあり、オンラインやハイブリッド型の学会活動が主になってきており、ネットを介した発表が主流です。
従来行われてきた方法だけにとらわれず、常に新しい方法も模索し、更なる安全な出産を目指していきます。

麻酔はうまいですか?

2021年03月22日

『麻酔はうまいですか?』
『経験は豊かですか?』
『誰が麻酔をしてくれますか?』
無痛分娩外来を行っていると、ときどきこのようなことを尋ねられます。
我々医師の経歴、無痛分娩歴については下記の無痛分娩の説明をご確認いただければ、ご安心できるかと存じます
東京マザーズクリニックの無痛分娩について2020年HP6.27.pdf (mothers-clinic.jp)
 
このようなことを心配なさる原因として、慣れていない医師、スタッフ、施設では無痛分娩に不安があるからだと思います。大切な皆様のお体を預かる側として、ご心配はごもっともです。十分な知識、経験のある医師が担当いたしますのでご安心ください。

無痛分娩のトレンド

2021年03月15日

現在、日本でも世界でも最も一般的な無痛分娩といえば硬膜外無痛分娩をさします。しかし、時代時代で無痛分娩の方法にはトレンドが存在し、今後も硬膜外無痛分娩が最も一般的となっているかはわかりません。無痛分娩のトレンドについてお話します。
無痛分娩が世界で初めて行われたときは吸入麻酔による無痛分娩でした。当時はクロロホルムやエーテルといった麻酔薬が存在し、痛みを取り除く役割を果たしました。吸入麻酔の良い点は簡便で、点滴などを必要とせず、すぐに痛みを取り除ける点です。その後、静脈麻酔による無痛分娩も登場します。静脈麻酔の場合、吸入麻酔とは異なり、点滴があれば、吸入麻酔用の器具を必要としないメリットがあります。
しかし吸入麻酔も、静脈麻酔も誤嚥性肺炎というデメリットのため、その後に登場する硬膜外鎮痛(麻酔)の登場により、首位の座を奪われます。誤嚥性肺炎は吸入麻酔や静脈麻酔などで意識を失った際に、嘔吐し、吐物が肺に入り、肺炎になってしまう病名です。硬膜外鎮痛では、意識があるため、誤嚥性肺炎は起こりづらくなります。
最近のトレンドは脊髄くも膜下鎮痛を行うCSEA、くも膜に小さい穴をあけるDPEなど様々な方法があり、施設によって行う場合と、そうでない場合があります。また、吸入麻酔や静脈麻酔が無痛分娩からなくなったわけではなく、和痛分娩という形で行われているところもあります。
産痛緩和の方法にもいろいろあるため、無痛分娩を受ける皆様にも色々な方法があるということを知っておく必要があると思います。

麻酔薬が過剰に入っていないかの確認方法

2021年03月08日

前回、無痛分娩で使用する薬が過剰に入っていないかを確認する方法があるということをご報告しました。今回はその内容を具体的にお話ししたいと思います。

①記録による確認
記録から1時間当たり〇〇ml投与できるというように計算して安全な量を見ていきます。さまざまな文献や経験から一般的に安全な量がわかっているため、その範囲内の投与量にします。

②麻酔範囲の確認
麻酔の範囲が過剰に広がっていないかを確認します。冷たい氷を皮膚に当て、適度な範囲に麻酔が広がっている必要があります。逆に広がりが足りない場合は、効きにくくなっていることや、足りないことを示唆しています。

③症状による確認
麻酔薬が多くなると、めまい、耳鳴り、味覚異常などの症状が出ることがあります。このような症状がないことを投与するたびに確認していきます。この症状が出た場合、すぐに薬剤投与を中止すれば、大事には至りません。
 
これらのように複数の方法によって過剰投与を防ぎ、完全無痛分娩が行えるようになりました。

薬を入れるタイミング

2021年03月01日

無痛分娩開始時期については以前お話しした通り、ご本人の希望のタイミングで構いません。ある程度我慢して『もう無理っ!』となってから入れるでもいいですし、少し痛いくらいで初めても構いません。多くの方は、少し痛いくらいで始めます。いつ始めるかによって、出産方法や赤ちゃんへの影響に違いはありません。
薬は1~2時間ほどで切れます。当院では痛み止めが切れて痛み出してから薬を入れるのではなく、痛くなる前に薬を入れます。薬を入れてから効き始めるまで15分ほどかかってしまうため、痛くなってから薬を入れると、痛い時間が出てしまうためです。痛くないのに薬を入れることによって、過剰投与を心配される方もいらっしゃると思いますが、麻酔の量が過剰になっていないかどうかは様々な方法で確認を行っているので、ご安心ください。確認方法は次回のコラムでご紹介します。

無痛分娩が効くまでの時間、切れる時間

2021年02月22日

無痛分娩で使用する薬剤の効き始めるまでの時間と、薬が切れて痛みが出るまでの時間についてお話をしたいと思います。
薬にはいくつか種類があり、それぞれで効き始めるまでの時間、効果時間は異なるのですが、一般的に使用されている薬剤は15分ほどで徐々に効き始め30分頃までにはしっかり効いている状態になります。無痛分娩を開始するタイミングではこのタイムラグを考慮して開始しなければなりません。すぐに効くものと思ってギリギリまで我慢しても、効果開始まで苦しむことになりかねません。30分経っても痛みが取れていない場合、その薬剤では効果がないことがわかります。その場合は量を増やしたり、薬剤を変えるなどして、痛みを取りますので、ご安心ください。
次に切れるまでの時間ですが、これも個人差はありますが、おおよそ1~2時間ほどで効果は消失します。無痛分娩中は効果が切れる前に次の薬剤を投与することで、ずっと痛くない状態を保ちます。分娩が終了した場合、硬膜外鎮痛は終了となります。1~2時間ほどで徐々に痛みが出ることがありますが、この場合は点滴や内服薬で痛みをコントロールします。産後もなるべく痛くないようにいたしますので、ご安心ください。

麻酔科外来での診察

2021年02月08日

今年1月から無痛分娩外来が開かれ、次々の分娩予定の方々がいらっしゃいます。無痛分娩外来では無痛分娩の方法をご説明し、いろいろとお話を聞かせていただきます。そして当院で無痛分娩が可能かどうかも併せて診せていただきます。
この外来では直接背中を見せていただき、脊椎の状態を診察します。変形や曲がりがないか、手術の痕がないかなど。そして腰からお尻の上までの部分を仙骨と呼びますが、この部分に異常がないかを診ます。潜在性二分脊椎といって、日常生活は普通に過ごせるけど、実は脊椎に異常があることがあるためです。4000人に1人の割合で潜在性二分脊椎は起こると言われており、もしかしたら硬膜外無痛分娩ができない可能性があるためです。
無痛分娩でわからないこと、不安なことがありましたら遠慮なくご相談ください。

無痛分娩機材の新規格による医療安全

2021年02月01日

無痛分娩の針やシリンジなどが今年から新規格になりました。
この変更は医療安全のためなのですが、まず去年まではどうなっていたのかを説明します。
去年までは静脈注射や筋肉注射する針やシリンジと、無痛分娩(硬膜外鎮痛、脊髄くも膜下鎮痛)のために使用する針やシリンジは同じものが使用されていました。そのため当院ではありませんが、『無痛分娩用の薬を誤って静脈注射してしまいました』『静脈用の薬を間違って硬膜外に入れてしまいました』という報告が散見されました。そこで、今年から日本中で麻酔の薬は麻酔専用の針とシリンジで行うようになりました。麻酔用のシリンジで吸った局所麻酔薬は静脈には入れられず、静脈用のシリンジで吸った薬剤は、硬膜外に投与できなくなりました。シリンジを接続する形が異なるため、接続ができず、薬が入れられなくなったのです。
無痛分娩で使用する薬剤は静脈注射禁止の薬剤もあり、このような取り組みは医療安全としてとても重要なこととなります。
無痛分娩は安全である前提で行う必要があります。安全に配慮された無痛分娩を受けていただけるように機材も新しく進化し、安心してお産に臨んでいただければ幸いです。

無痛分娩で出血は増えるのか?

2021年01月25日

以前無痛分娩で出産された方が産後に出血が多くなり、ご家族の方から『無痛分娩が原因で出血が多くなったのですか?』というご質問がありました。その方の出血の原因は無痛分娩とは全く異なる理由で出血が起こったのですが、無痛分娩と出血が関連していると思われている方もいらっしゃると思います。今回はこのことについてお話をしたいと思います。
無痛分娩を行った人と行わなかった人の出血量を比較したいところですが、当院は圧倒的に無痛分娩率が高く、無痛分娩を行わなかった方がほとんどいないので、同時期の比較をするために、私が以前働いていた他の病院のデータで比べてみたいと思います。そして比較するうえで器械分娩を行ったかどうかが影響するので、そこも比べてみましょう。まず器械分娩なしの場合
分娩方法 無痛分娩有/無 器械分娩有/無 平均出血量(ml)
経腟分娩 あり(18例)) なし 329
なし(24例) なし 395
このように出血量は無痛分娩の有無であまり変わらず、むしろ平均出血量は無痛分娩のほうが少なくなっています。
次に器械分娩有の場合
分娩方法 無痛分娩有/無 器械分娩有/無 平均出血量(ml)
経腟分娩 あり(20例) あり 514
なし(6例) あり 401
器械分娩だけで比べると無痛分娩を行った場合出血量が多くなる傾向にあります。ちなみに出血が多くなった無痛分娩の方でも輸血や特別な処置が必要になることはありませんでした。
上記のように器械分娩では出血量は多くなる傾向にあるので、当院では早期から止血剤などを用いて出血量が多くならないように取り組んでおります。
無痛分娩をしたから出血が増えるのではなく、無痛分娩をした場合出血が多くなる人もいるので、しっかりと予防と治療に取り組むことが大切だと考えております。

妊娠高血圧症候群と無痛分娩

2021年01月18日

妊娠中や産後の産褥期に血圧が上昇する妊娠高血圧症候群というものがあります。蛋白尿も出ることがあり、浮腫や頭痛などの症状が出ることもあります。
妊娠高血圧症候群の方は無痛分娩が有用であるということが分かっています。妊娠高血圧症候群では血管が収縮して高血圧になり、血管が収縮することで末梢の循環が悪くなり臓器などに悪影響が起こることがあります。無痛分娩は血管拡張作用があるため、収縮した血管を拡張し、臓器血流を改善する効果があるためです。特に妊娠子宮、胎盤なども同様で、赤ちゃんに対しても有効です。また、陣痛の痛みによって高くなった血圧がさらに上昇し、神経症状(視覚異常、痙攣)を呈したり、脳出血の原因となることもありますが、無痛分娩は痛みをコントロールするので、陣痛による血圧の上昇は起こらないため、これらのリスクを減らしてくれます。
妊娠高血圧症候群では時に血小板や凝固機能が低下することがあり、事前に採血し調べる必要があります。これらの極端に機能が低下している場合は硬膜外鎮痛や脊髄くも膜下鎮痛が困難な場合があります。
妊娠経過中は問題なくても入院してから血圧が高くなる方もいらっしゃいますし、出産後に血圧が高くなる方もいらっしゃいます。多くの人が硬膜外無痛分娩を受けていただくことで妊娠高血圧の重症化を防ぐことにつながるかもしれません。

側弯症妊婦さんの無痛分娩について(続編)

2020年12月21日

以前側弯症の硬膜外無痛分娩についてコラムで取り上げました。その影響か、それから外来で側弯症のかたが増えたような気がします。もともと当院で出産を希望される方で、コラムをお読みになって、側弯症のことを告げたのか、あるいは側弯症の方が当院での無痛分娩を受けたいということで当院を受診してくださったのかは分かりませんが、読んでいただけてうれしく思います。
そういうわけで側弯症についてもう少しお話をしたいと思います。
インターネットで調べてみると側弯症や強い側弯症のかたはお断りしている施設も結構見受けられます。強い側弯症のかたでは硬膜外カテーテル挿入はかなり難しいのは確かです。無痛分娩が普及しているアメリカでは硬膜外カテーテルが挿入困難な場合は他の代替手段で無痛分娩を行います。当院でも事前に硬膜外カテーテル挿入困難が予想される妊婦様には当院の麻酔科外来を受診していただき、挿入の難易度、リスク、代替手段についてもお話させていただいております。
痛みゼロの無痛分娩を目指すためにももし不安なことがありましたら是非ご相談ください。

麻酔科外来が始まります

2020年12月19日

2021年1月から麻酔科外来が始まります。
月曜日、火曜日、水曜日、金曜日、土曜日の各曜日午後に無痛分娩担当麻酔科医が外来を担当します(有料診療となります)。
今までは希望者やリスクのある方のみを対象としておりましたが、1月からは無痛分娩を希望される全ての方に受診していただきたいと思います(2021年1月に36週に入る方は必須ではありません。ご希望の方はご相談下さい)。
妊娠週数に決まりはありませんので、どの時期でも受けていただいて構いません。妊婦検診と合わせて予約をお取りすることも可能です。ご不明な点はご予約の際にお問い合わせ下さい。

無痛分娩外来で行うことは、硬膜外鎮痛が可能かどうかを調べるための問診と診察、無痛分娩の説明と副作用についてお話します。既往歴やアレルギーなどの問診や、実際に背骨を触診させていただき、難易度や可否を診察させていただきます。無痛分娩の説明では疑問に思っていることなど、できる限りお答えしますので遠慮せずお尋ね下さい。
また、無痛分娩を迷っていらっしゃる方も受けていただいたうえで判断していただければ幸いです。
入院する前に我々麻酔科医の顔を見て話を聞いていただく事で、分娩に対する不安や緊張を少しでも緩和できればと思っております。

硬膜外無痛分娩の注射は痛い?

2020年12月14日

『お産は無痛分娩で痛くないから怖くないけど、背中の麻酔が怖い』
『入院して一番注射が緊張する』
これらのような意見は少なくないと思います。実際に硬膜外鎮痛のための管を入れる処置の際にお話を知っていると多くの方がこの背中の麻酔に関して不安、恐怖感、緊張感を持たれていますし、血圧や心拍数の上昇もあります。
この硬膜外鎮痛の処置は注射をしますので、『痛みゼロ』とは言えませんが慣れている医師が行いますので、それほどつらい経験となることはないと思います。
実際に終わった後に話を聞いてみると
『思ったほど痛くなかった』
『もう終わったんですか?』
と言ってくださる方もかなりいらっしゃいます。
『予想と同じくらい痛かった』と思う方よりも『予想より痛くなかった』とおっしゃる方のほうが多く感じます。気を使っていってくださっているのかもしれませんが、幸い『予想よりも痛かった』という感想は今のところないと思います。
あとは針を刺す痛み以外に、カテーテル(細い管)を入れるときに、強い違和感が出ることがあり、その違和感が嫌だったということは聞いたことがあります。硬膜外腔という狭い空間に管を入れる際に神経へ圧迫症状で出るのですが、症状はその時だけで、処置が終わればなくなります。
出産だけでなく、無痛分娩のための処置も痛くないように日々考えながら行って参りますので、あまり緊張なさらずにいらっしゃってください。

硬膜外カテーテルは入れ替えることもあります

2020年11月23日

当陳で行う無痛分娩は硬膜外無痛分娩というもので、背中から細い管を入れて、痛み止めをいつでも入れられるようにしておきます。。『せっかく入れた硬膜外カテーテルを入れ替えないといけないの?』と思われる方もいらっしゃいますが、十分に効果が望めない場合には入れ替えを提案させていただくことがあります。実際に行うことは1割以下なので、ほとんどの方は最初に入れたカテーテルでそのまま出産まで管理できます。
しかし時に十分に痛み止めが効いていない場合や、今後痛みが出てきそうな場合は入れ替えを行うことで痛みをゼロにコントロールして出産することが可能になります。
入れ替える原因は様々ですが、カテーテルが抜けてしまうなど、カテーテルの位置が正しくないことがほとんどと考えられます。
過去に、『硬膜外カテーテルの不成功は23%』という報告1)もあり、一定の割合で不成功となることがあります。また同報告で『熟練者ほど不成功率は低下する』とも述べられています。当院は硬膜外無痛分娩率9割以上と高く、日頃から硬膜外カテーテル挿入になれている医者が行っているので、不成功率は報告よりもずっとずっと低いものです。
  
1)Thangamuthu, et al. IJOA 2013

無痛分娩中に測定すること

2020年11月16日

今回は無痛分娩の場合に行うモニターについてご紹介します。これらのことは無痛分娩を希望しない場合も測定することはあります。
 
①血圧
血圧が下がっていないかどうかを定期的に確認します。硬膜外鎮痛を行うと、痛みも取り除きますが、血管拡張により血圧低下が起こることがあります。血圧が低下した場合は輸液を増やしたり、昇圧剤を使用し直ちに血圧を正常化します。
②経皮的酸素飽和度・パルスオキシメータ
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、これは指につける装置で、リアルタイムに血液中に含まれる酸素の量を測定することができます。昔は皮膚の色を見て判断したり、正確な客観的な測定には採血以外にはなく、連続的な測定などはできませんでした。この装置の登場によりリアルタイムに、正確に、非侵襲的に測定することができ、全身麻酔が格段に安全にできるようになりました。
最近では新型コロナウイルスの影響で一般の方でも聞いたことがあるかもしれません。
この経皮的酸素飽和度を測定するパルスオキシメータの原理は日本光電の青柳卓夫先生が発明しました。同じ日本人として大変誇らしいことですね。
全脊椎麻酔や広範囲の麻酔など呼吸抑制が起こると低下します。
③心電図
心臓の動きを電気信号で読み取り波形にします。不整脈や心臓の筋肉の酸素が不足していないかなど多くの情報が非侵襲的(痛みがなく)に連続的に得られます。局所麻酔中毒などで不整脈が出ないか、早期発見します。
④胎児心拍モニター
赤ちゃんの心音と、子宮の収縮をモニタリングします。このモニターで赤ちゃんが苦しくないかどうかを見ています。
⑤体温
無痛分娩を行うと体温が上昇することがあります。そのため、定期的に体温を測定し、発熱がある場合には補水やクーリングなどで熱が上がりすぎないようにします。無痛分娩に伴う発熱の原因は新型コロナなど感染症とは異なります。
 
これらのモニターの情報は非侵襲的(痛みがなく)で簡便でかつ情報量が多いため測定します。JALA(無痛分娩関係学会団体連絡協議会)でも使用が推奨されており、より安全な出産になるように心がけております。

無痛分娩で使用する薬について

2020年09月26日

今回は無痛分娩中に使用する薬剤についてご説明します。
知っておくことで実際に受けた時に安心して出産できると考えております。
 
①アナペイン
局所麻酔薬と呼ばれるものの一つです。神経細胞に働き、痛みの信号を止めてくれます。痛みの信号以外に運動の信号も少し止めてしまうため、軽い脚の動きづらさがでます。脚が痺れる感覚もこの薬が原因です。アナペインはより安全な局所麻酔薬を開発していく中で2001年8月7日本邦で発売となりました。それまでは後述するキシロカインのように運動神経の抑制が強い薬剤や、マーカインと呼ばれる局所麻酔薬は大量投与時に心配される局所麻酔中毒に対し懸念がありました。アナペインはこれらの問題点を解決し、運動神経の抑制は弱く、局所麻酔中毒も重篤化しにくくなりました。

②フェンタニル
医療用麻薬の1つです。手術や癌の疼痛管理として古くから使用されており、妊婦さんに対しても大変多くの使用経験があります。脊髄にある受容体に作用し、痛みの信号を遮断することで鎮痛効果があります。痒み、吐き気などが副作用としてあります。従来局所麻酔薬のみで無痛分娩を行っていましたが、局所麻酔薬単独では濃い濃度を大量に使う必要がありました。ところがフェンタニルを局所麻酔薬に混合して投与することで、局所麻酔薬を薄く少なくすることに成功し(相乗効果といいます)、脚も動きやすく、局所麻酔中毒にもなりにくく安全な無痛分娩を行えるようになりました。

③キシロカイン
本邦で使用される局所麻酔薬としては最も一般的と言われる薬剤で他の局所麻酔薬より歴史も古いため、安全性も高いです。歯科麻酔などでも使用されます。
特徴として早く効いて早く切れるという特徴があります。
無痛分娩では早く痛みを取りたい場合や強い痛みが出た時に使用されます。
また、硬膜外カテーテルを挿入する際の皮膚の麻酔や、硬膜外カテーテルが硬膜外に入っているかを確認するための試験投与にも使用されます。
キシロカインアレルギーがある方は事前にお申し出ください。

④マーカイン
局所麻酔薬の一つで帝王切開の際に脊髄くも膜下麻酔で使用されます。
歴史的にはキシロカインとアナペインの間になります。
アナペインと同様にキシロカインよりも長く作用します。
 
①、②の2薬剤が無痛分娩で多く使用される薬剤で、ほとんどの方がこの2剤の組み合わせだけで痛みが取れます。
多くの使用経験もあり、科学的に妊婦さんにも安全に使用できる薬剤を使用して、出産に臨んでいただきたいと思います。

無痛分娩中に起こる痛み(その2)

2020年09月19日

前回はお産に関わる痛みを取り上げました。
今回は入院中に起こるお産以外の痛みを取り上げます。

①点滴の痛み
出産を行う場合、安全のためと子宮収縮剤投与のために点滴をします。インフルエンザ予防接種とは違い、血管内にカテーテルを留置するものになります。カテーテルは柔らかい素材なのですが、入っていることで多少の違和感はあります

②硬膜外カテーテル挿入の痛み
陣痛の痛みを取り除くための麻酔(注射)ですが、これもちょっと痛いです。局所麻酔をして硬膜外無痛分娩のためのカテーテルを挿入しますが、局所麻酔をする注射がちょっとだけ痛いです。そのあとの太い針を刺しますが、痛みはほとんどありません。もし痛みを感じた場合は局所麻酔を追加するので仰ってください。硬膜外カテーテル挿入は神経の近くに挿入するので『ゴソゴソする感じ』はあります。時に響く感じがあるので、それも教えてください。

③内診、頸管拡張の痛み
外来でも行っている診察を行いますが、計画分娩ではまだ頸管(子宮の出口)が広がっていない場合は頸管拡張といって、頸管を広げるために風船を入れます。風船で物理的に広げておくことで、スムーズにお産になるようにします。これも少し痛いです。

④分娩後の痛み
分娩後の子宮は出血を抑えるために収縮する必要があり、生理痛に似た(時により強い)痛みがでます。特に経産婦さんに強く出ます。それ以外に会陰切開を行った場合や会陰部が裂傷などで裂けた場合は縫合をしますが、その傷跡が痛むことがあります。会陰切開や会陰裂傷などを起こした場合、縫合をします。縫合する糸は吸収されますが、気になる場合は退院時に抜糸することもあります。
 
入院中のお産以外での痛みについて触れました。せっかく無痛分娩を選んでいただいている以上、なるべくそれ以外のことも痛みがないようにしたいと思っています。痛み止めのシールを貼ったり、定期的に鎮痛薬を内服するなど、様々な方法で痛みを軽減するように対応します。

無痛分娩中に起こる痛み

2020年09月11日

当院の無痛分娩は完全無痛分娩と銘打って痛みをゼロにするように管理いたします。
しかし、時として一時的な痛みが出る場合などがあるのでご説明します。

①麻酔の開始時
麻酔を開始する前はもちろん痛みます。開始時期はいつでも構いませんが、なるべく痛みを感じたくないのであれば早めの開始が良いでしょう

②突発痛(break-through-pain)
最初は痛くなかったのに、分娩が進むことで下腹部、腰、会陰部が痛くなることがあり、これを突発痛(break-through-pain)と呼びます。分娩が進行することで痛みが強く広範囲に出るため痛みが出ることがあります。予防的に薬は入れていますが、途中で痛みが出た場合は早めに教えてください。追加することで痛みが緩和されます。

③回旋異常
通常赤ちゃんは回りながら分娩に至りますが、回旋異常とはその回り方が通常と異なる向きで進むことで、痛みが出てしまいます。薬を変えることで痛みが緩和されます。

④カテーテル位置異常
硬膜外カテーテルは硬膜外という背骨の中にある空間に管を挿入するのですが、ほとんどの場合真ん中にあることはなく、右か左に寄っていることがほとんどです。それでも左右に効いていれば問題ありませんが、極端に左右にずれている場合は片側にのみ鎮痛効果が出てしますことがあります。またカテーテルが抜けてしまったりすることもあります。この場合、カテーテルを調整や、刺し直しを行います。

⑤麻酔効果不十分
麻酔効果は人によって多少の違いがあります。同じものを使ってもお腹の張りも感じず足も動かなくなる人もいますし、痛みを感じる人もいます。多くの方が痛みがない濃度と量を用いますが、麻酔に強い妊婦さんにはお薬を変更して痛みを緩和します。

⑥脊椎や硬膜外の解剖学的異常
硬膜外腔には血管や隔壁、脂肪などがあり、薬剤の広がりの妨げになることがあります。他にも変形やヘルニアなど薬の広がりに物理的影響がある場合があります。麻酔薬の量を増やしたりして、麻酔を広げることで痛みを緩和します。
 
色々書いてしましましたが、多くの方は痛みを感じることなくお産になりますのでご安心ください。またこれらの痛みが出た場合もなるべく早く痛みを取り除く対策を講じますので心配せずに臨んでください。

痛み止めがどのようにして効くか?

2020年08月29日

当院の無痛分娩では硬膜外鎮痛という方法で痛みを取り除きます。全身麻酔ではなく、局所麻酔の一つです。無痛分娩ではごく一般的な鎮痛方法になります。
我々の生活の中で局所麻酔を行うのは歯科麻酔を受けられる方が多いと思います。歯科では『じゃあ、麻酔しますねー』と一般的な処置として行いますが、どうして痛みが取り除かれるのでしょうか?
まず痛みの信号はどのようにして起こるのかについて理解しましょう。
痛みの原因は様々な刺激によって起こります。陣痛は子宮の収縮と赤ちゃんが産道を通過する痛みで、他にも打撲や切り傷であったり、痛みにはいろいろな痛みがあります。これらの刺激が起こると近くにある神経の中で変化が起きます。ナトリウムイオンなどの陽イオン(+の電荷)が周囲の神経細胞に入ります。細胞内に+の電荷が入り、この刺激の情報が神経を伝って、脊髄に入り、最終的に脳に到達し、痛みを感じます。
局所麻酔薬はこのナトリウムイオンが神経に入ることをブロックします。硬膜外鎮痛では痛みの信号が脊髄に入る付近でナトリウムイオンが神経細胞に流入することを妨げこれ以上先に信号が行かないようにします。
なかなか難しい内容で申し訳ありません。お伝えしたいことは、我々はしっかりした理論をもって無痛分娩に取り組んでいることをご理解いただけると幸いです。

硬膜外無痛分娩はお産が終わるまでしっかり行います

2020年08月15日

前回硬膜外無痛分娩の開始時期を遅らせても帝王切開率や鉗子分娩率に影響を与えないため、妊婦さんが希望するときに硬膜外無痛分娩を開始するということをお話しました。

今回のお話は、硬膜外無痛分娩はいつまで行うのかという内容です。
病院によっては分娩Ⅱ期(子宮口が全開大)すると無痛分娩をやめる病院があります。理由として、いきみ方が分からなくなるからということです。また、分娩Ⅱ期に進行が悪いと同じ理由で無痛分娩を止めてしまう病院もあります。過去の報告では無痛分娩を途中で中止しても結果的に帝王切開率や鉗子分娩率に差はないことが分かっています。そればかりではなく、無痛分娩を途中で中止することでお母さんの分娩に対する満足度は下がってしまいます。
そのため、当院ではお産が終わるまで無痛分娩は行います。
無痛分娩を行っていても多くの方が自分でいきむことはできますし、我々も上手にお産ができるようにアドバイスなどサポートを行って参ります。
最後までしっかり痛みを取り除くことで、お産はもちろん、会陰切開になった場合の痛みや、その後の処置の痛みも取り除くことができるため、最後までしっかり痛みを取り除きましょう。

硬膜外無痛分娩はいつ開始してもいいんです

2020年08月08日

当院の無痛分娩はいつ開始してもいいんです。

病院によっては子宮口が広がってからでないと行わないという施設もあります。昔は子宮口が5センチ広がってから無痛分娩を開始しないと帝王切開や鉗子分娩が増えるといわれていたこともありましたが、最近の研究で子宮口が広がる前と後で無痛分娩の開始を遅らせても娩出方法に変わりはないということが証明されましたので、妊婦さんが無痛分娩を行いたいと希望した時に始めます。

計画分娩の場合は入院して痛くないうちに硬膜外カテーテル(管)を入れておきます。こうすることでいざ痛みが始まった時にそこから麻酔を行うのではなく、すぐにカテーテルから痛み止めを入れることが可能だからです。
逆に妊婦さんの希望で無痛分娩が開始する場合、いつ開始したらよいのだろうと迷う方もいらっしゃいます。生理痛を超えたあたりで始める方もいらっしゃいますし、少しでも痛みを感じたら始める方もいらっしゃいます。もちろんギリギリまで頑張りたいという希望があればそれでも構いません。迷われた場合、スタッフにご相談ください。

無痛分娩中の過ごし方

2020年08月01日

無痛分娩中は妊婦の皆様に過ごし方について、いくつかお願いがあります。
①立ち歩くことはできません
痛みの神経だけでなく、運動神経も少しブロックするため、立ち上がろうとすると転んでけがをしてしまうかもしれません。そのため、ベッド上で過ごしていただきます。
脚が全く動かないというわけではありません。いつものように軽やかな動きはできないということです。
②食べることはできません。
絶対に食べてはいけないというわけではないのですが、無痛分娩中、食事は控えていただきます。理由として、食べ物を食べていると吐き気の原因になること。そして吐いたものを誤って肺に吸引して肺炎を起こすことを避けるためでです。
お腹が減ってしまいますよね。
ごめんなさい(-_-;)
 
一方で以下のようなことは行って構いません
①ベッド上では動いても構いません
前述したように歩くことはできませんが、ベッド上で横を向いたり、座ったりすることはできます。麻酔や点滴の管は抜けないように固定してありますので、動いても大丈夫です。麻酔をしているからとジッと動かない方もいらっしゃいますが、動いて構いません。
我々としてもある程度は動いていただいたほうがいいと考えます。
脚を動かさないまま過ごしていると深部静脈血栓症になってしまうことがあります。エコノミークラス症候群と同じものですが、動かさなくなった脚の血流がうっ滞することで、血栓ができてしまいます。
他にも、麻酔が効いているため、通常ですと足が痛くなることがあっても痛くありません。踵(かかと)や踝(くるぶし)など、脂肪や筋肉がついていない場所が一定時間圧迫を受けると、皮膚が赤くなってしまいます。
定期的に足を動かしたり体勢を変えるようにしましょう。またこちらからこのような体勢にしましょうと指示することもあります。
②一部の飲水は可能です
食べることはできませんがOS-1の飲水は可能です。OS-1は他の飲料と比較し早く胃から吸収されるため安全に飲水でき、吸収されたものは血管に入るため脱水予防にも有効と考えています
 
具体的にはどのように過ごしているでしょうか?
①携帯電話
電話でお話をしている方もいらっしゃれば、アプリを操作されている方もいらっしゃいます。皆様必ずと言っていいほど手元にあり、分娩時も身近に置いてあります。
②読書
趣味の本、赤ちゃんの名前や育児の本など時間があるので本を持参される方もいらっしゃいます。
③名前を考える
産まれるまでにまだ名前を決めてない方も多いです。候補がいくつかというかたもいます。この時間を利用して名前を考える方もいます。
④音楽を聴く
大好きな音楽、リラックスできる音楽を聴き、ゆったりとした時間をお過ごしの方もいます。
④その他
睡眠不足も続いていることでゆっくり休まれる方もいらっしゃいます。また一人になる時間も赤ちゃんが産まれるまでの残り少ない時間を使って、思い出作りなど素敵な時間に当てられる方もいます。
 

側弯症がある方の無痛分娩について

2020年07月27日

時々外来で「側弯症があるのですが、無痛分娩はできますか?」と尋ねられることがあります。側弯症にもいろいろあり、可能な場合と対応が難しい場合があるのでご説明します。

側弯症は思春期の頃に起こり始め、女性のほうが多いです。肩の高さの違いや、前屈して背中の左右差を見るなど学校で行った経験を持っている方も多いと思います。本来まっすぐになっているはずの脊椎が左右に弯曲します。先天的に側弯症を持っている方もいらっしゃいます。

硬膜外麻酔を行う際、脊椎に対しまっすぐ針を刺し、カテーテルを挿入するわけですが、側弯症の場合は脊椎が弯曲し、その弯曲に合わせて脊椎が回転している場合があります。すると脊椎にまっすぐ針を刺しても硬膜外にカテーテルが入らない場合があります。弯曲や回転に合わせて針を挿入しますが、困難な場合もあります。またカテーテルが入っても右や左に寄ってしまうこともあります。
過去の経験からはなるべく側弯症の方にも無痛分娩を受けていただき、対応させていただいてます。側弯症の方でも硬膜外カテーテルを挿入し、痛みも取れるので、側弯症というだけで無痛分娩ができないということはありません。ただし、側弯症が強い場合などは、針を挿入してもうまく入らないケースもあります。

また手術を行って、脊椎に金属が入っている場合は当院では無痛分娩をお断りする場合があります。金属が入っていると感染が起きやすく、カテーテルを介して、感染してしまった場合、金属を抜かなければならない可能性があるためです。ご相談ください。

硬膜外無痛分娩が受けられない場合

2020年02月15日

時々外来にいらっしゃる妊婦様で「無痛分娩が受けらえますか?」と尋ねられることがあります。硬膜外無痛分娩は一部の方には向いておらず、そのような場合はご説明し、必要によっては他院で紹介させていただくことになります。

A. 硬膜外無痛分娩ができない方
① 出血傾向のある方
硬膜外無痛分娩は背中の神経の近くに針を刺すことになります。その際に血管を傷つけ出血することがあります。正常ですと血はいずれ固まり、自然に止血されますが、出血傾向のある方は止血されず出血が続き、血腫となり神経を圧迫し、神経症状がでてしまいます。そのため、出産前には必ず採血で皆様が出血傾向でないかどうかを確認しております。
② 腰椎を手術し人工物が挿入されている方
以前に腰の手術を行い、その際に人工物が腰椎に挿入されている方がいます。人工物は感染に弱く、硬膜外無痛分娩を行い、カテーテルを挿入する際に、挿入されていた人工物が感染してしまった場合、人工物を除去する手術が追加で必要になってしまうかもしれません。またこのような妊婦さんの場合、帝王切開になった場合も帝王切開の麻酔である『脊髄くも膜下麻酔』は避けたほうが良い場合があります(同じ理由)ので、24時間麻酔科医が滞在する病院に紹介させていただいたほうがよろしいかとおもいます。
③ 腰の針を刺す場所に感染が起こっている方
硬膜外にカテーテルを挿入する際は厳重に消毒し、我々もマスクや清潔な手袋を装着し、感染予防に注意しながら行います。菌やウイルスを神経の周囲に持ち込むと感染を起こし、髄膜炎、硬膜外膿瘍などになってしまいます。もともと針を刺す場所が感染していた場合、針を刺すことで菌やウイルスを神経周囲に持ち込んでしまい、様々な合併症を起こしてしまうため、硬膜外無痛分娩は適しません。
 
B. 硬膜外無痛分娩が難しい可能性のある方:硬膜外無痛分娩ができないことがあります
① 病的肥満の方
病的肥満の方の場合、皮膚から硬膜外腔までの距離が長くなり、難しくなることがあります。当院の施術者は硬膜外鎮痛に慣れておりますので、できないということはないと思いますが、時間はかかるかもしれません。
② 腰椎の手術をしたことがある方(人工物なし)
人工物が入っていないので感染については正常な方と変わりないと思いますが、腰椎の手術をしたことで、針を刺す周囲が癒着、変形している場合があります。これらは穿刺を難しくするだけでなく、硬膜外無痛分娩で使用する薬剤の広がりにも影響を与えるかもしれません。
③ 側弯症など脊椎の変形が著しい方
通常背骨はまっすぐですが、側弯症などでは背骨が弯曲しています。硬膜外カテーテルは曲がった背骨に沿って挿入することになりますが、骨の様子は皮膚を通してみることはできませんので、時間がかかることがあります。
④ 脊髄神経疾患のある方
一部の脊髄神経の病気をお持ちの方は硬膜外鎮痛に不向きな方がいらっしゃいます。疾患によって対応は異なりますので、お尋ねください。
⑤ 局所麻酔アレルギーのある方
局所麻酔アレルギーがあるかたは事前にご申告ください。一番多いのはキシロカインアレルギーですが、もしアレルギーがあるかたは、それ以外の薬剤を用い、慎重に無痛分娩を行います。

『硬膜外無痛分娩ができない方』、『硬膜外無痛分娩が難しい可能性のある方』いずれの場合も、状況によっては硬膜外無痛分娩を行えることもあるかもしれませんし、代替手段があるかもしれません。ご不明な点は当院までお問い合わせください。

安全な無痛分娩を行うために求められる医療体制(診療体制について)

2020年02月01日

2018年3月29日付で無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究グループ(代表海野信也)が公表した『無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言』についての解説第3回です。今回がこの提言開設の最終回です。提言の内容としては他の内容にも提言を行っていますが、学会へのインシデントアクシデントの報告やワーキンググループ設置などこのコラムの中での開設の必要はないと考え、今回が最後の解説となります。
今回は『診療体制』についてです。

提言の中で無痛分娩麻酔管理者、麻酔担当医、無痛分娩研究修了助産師・看護師を配置することとなっています。
① 無痛分娩麻酔管理者はその施設での無痛分娩の責任者であり、助産師や看護師の教育、施設方針、無痛分娩マニュアル、危機対応シミュレーション開催などが仕事になります。 無痛分娩麻酔管理者になれる要件として、常勤医師、麻酔科標榜医以上または産婦人科専門医、定期的な講習会受講が挙げられます。
② 麻酔担当医はその施設で無痛分娩を実際に行う者です。妊婦さんの観察、薬剤投与、記録と管理、麻酔開始直後の妊婦さんの集中的管理、無痛分娩中は迅速に対応できるように待機などを行います。 麻酔担当医の要件として、麻酔科標榜医以上または産婦人科専門医、定期的な講習会受講、十分な能力(硬膜外麻酔100例以上、安全確実な気管挿管)が挙げられます。
③ 無痛分娩研修修了助産師・看護師は母子ともに安全で家族も納得のいく分娩を支援、異常が児予測される際に医師と連携し安全を確保、無痛分娩中の全身状態やバイタルサインの観察を行い報告します。 無痛分娩研修修了助産師・看護師の要件には新生児蘇生ができる(NCPRの資格※1)、定期的な講習会受講などがあります。

安全管理対策として、無痛分娩マニュアルや無痛分娩看護マニュアル作成、施設内勤務者が参加する危機対応シミュレーションを少なくとも年1回施行する必要があります。 それ以外にも緊急時に必要な設備、医療機器などを取りそろえておく必要があります。 設備や機器として、気管挿管を行うための器具、除細動器、生体モニターなど 薬剤はアドレナリンなどの強心剤、プロポフォールなどの鎮静薬、ロクロニウムなどの筋弛緩薬など

今回紹介した提言が無痛分娩を行う施設で必須化されれば、どこの施設でもある程度安全な無痛分娩は行えると考えられます。しかし今回の提言には強制力はなく、各医療施設が自主的に提言をもとに安全管理を行っています。そのため、安全な無痛分娩を行うためには無痛分娩を受ける妊婦の皆様と家族の皆様が十分に調べたうえで施設を決めることが重要になるでしょう。
※1NCPR:周産期新生児医学会の新生児蘇生法普及事業が行っている新生児の心肺蘇生法になります。

安全な無痛分娩を行うために求められる医療体制(情報公開について)

2020年01月24日

2018年3月29日付で無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究グループ(代表海野信也)が公表した『無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言』についての解説第2回です。
今回は『情報公開』についてです。

無痛分娩を受けたいと妊婦さんあるいは家族の皆様が思ったときに、通いたいと持っている医療機関が安全に無痛分娩を行えるのかなど無痛分娩についての情報を知る機会が必要になります。そこで提言の中で無痛分娩を行っている施設は情報を開示する必要があると提言しています。
『無痛分娩取り扱い施設は、無痛分娩を希望する妊婦とその家族が、分かりやすく必要な情報に基づいて分娩施設を選択できるように、無痛分娩の診療体制に関する情報をウェブサイトなどで公開すること』とあります。
具体的には無痛分娩の診療実績、説明文書、方法、急変時の体制、危機対応シミュレーション実施歴、無痛分娩麻酔管理者および麻酔担当医の麻酔科研修歴、無痛分娩実施歴、講習会受講歴などです。
これらの内容は各医療施設のホームページからも確認できますが、JALA(無痛分娩関係学会団体連絡協議会)のホームページから無痛分娩施設検索をクリックし、施設ごとの内容を確認することもできます。
現在JALA登録施設数は2019年12月11日の時点で85施設とまだまだ掲載していない施設も多く、充実した内容が求められます。
無痛分娩を行った施設が何も調べないために運悪く、十分な安全体制の整っていない施設でないことを防ぐために事前に調べることも大切だと考えます。
当院の場合はホームページ上に情報を掲載するとともに、JALAにも登録しております。

安全な無痛分娩を行うために求められる医療体制(スタッフの研修について)

2020年01月17日

2018年3月29日付で無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究グループ(代表海野信也)が『無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言』を発表しました。
今まで、無痛分娩を行う施設は特に施設基準などもなく、自主性を重んじ医療が行われてきましたが、無痛分娩の医療事故が報道され、不安が募る中、研究班が創設され調査が始まり、この提言によって今後の無痛分を行う施設の一定の基準が設けられました。この提言に強制力はありませんが、皆様が今後無痛分娩を行ううえで、安全に管理ができる体制かどうかを皆様がチェックできる一つの指標になると思います。
今回はこの内容を何回かに分けてご説明したいと思います。
第1回は『スタッフの研修』について説明します。

提言の中でスタッフは2年に1回程度講習を受講する必要があると述べられています。
内容としては,
① 安全な産科麻酔※1診療のための最新知見の習得及び技術向上(Aコース)
     無痛分娩麻酔管理者※2、産婦人科専門医の麻酔担当医※3が定期受講
② 産科麻酔に関連した病態に対応できること(Bコース)
     無痛分娩麻酔管理者、麻酔科医または産婦人科専門医の麻酔担当医が定期受講
③ 救急蘇生が実施できること(Cコース)
     無痛分娩麻酔管理者と助産師または看護師は受講歴が必要
     麻酔科医または産婦人科専門医の麻酔担当医が定期受講
④ 安全な産科麻酔実施のための最新の知識の習得とケアの向上(Dコース)
     助産師または看護師の定期的受講

この講習は上記のように職種(無痛分娩麻酔管理者/無痛分娩担当医、産科医/麻酔科医)によって受講する内容も異なります。過去の無痛分娩の事故を検証した中で、知識やトレーニングが不十分なために悪い転機につながったと考えられ、安全な無痛分娩を行う底上げとして教育、研修は必要と考えられます。
当院の場合は当院ホームページより確認することができます。
課題としてはまだ十分な研修場所や回数がなく、受講したくてもできない医療従事者が多いため、今後開催日数や場所を増やしていただきです。

※1産科麻酔:産科麻酔とは産科に関連する麻酔のこと。無痛分娩や帝王切開などの際の麻酔のこと
※2無痛分娩麻酔管理者:今回の提言によって設定された、その施設での無痛分娩の責任者
※3無痛分娩担当医:今回の提言によって設定された、その施設で無痛分娩を行う医師

分娩の痛みはどんな痛みか?

2018年03月22日

分娩は痛みを伴います。『鼻からスイカ』なんて表現を聞いたことがある方も多いとは思いますが、鼻にスイカを入れた方はいらっしゃらないでしょうから、想像はできても、この表現が正しいかどうかはわかりません。そのくらい痛いということでしょう。今日は分娩の痛みをテーマにお話ししたいと思います。

分娩の痛みは経過によって強さや場所が異なります。
子宮の出口が開くまでの間は赤ちゃんは子宮の中にいて、子宮が収縮することで赤ちゃんの頭が子宮の出口を徐々に押し広げることになります。痛みは主に子宮の痛みになるので生理痛の時と同じ場所になります。痛みの強さは人によって生理痛は異なるので難しいですが、徐々に痛くなり、最終的には生理痛の痛みを超える強さになります。下腹部痛以外にも腰の痛みが出ることもあります。
子宮の出口が開いてくると赤ちゃん頭が徐々に下がってくるので会陰部に圧迫感が出てきます。さらに分娩が進み赤ちゃんの頭が産道を通ってくると痛みは腰、会陰部に広がります。当然子宮は収縮しているので、今までの痛みに加えて会陰部、腰の痛みが出てきます。狭い産道を赤ちゃんが通ってくるため、お母さんの骨盤も強い圧迫から形が変形します。骨盤はいくつかの骨で組み合わさり構成されています。骨と骨とが靭帯で繋がっていますが、この靭帯が緩み骨の変形ができるようになります。負担は靭帯のある恥骨と腰としっぽの名残のある仙骨部にかかり、これらの場所が腰痛、恥骨痛として痛くなります。
いざ出産というときに最後の会陰部の進展が不十分で赤ちゃんによって、裂けてしまいそうな場合は会陰切開が行われることがあります。無痛分娩が行われない施設で会陰切開を行う場合は切る部分に局所麻酔の注射をして切開を入れます。この注射も痛いは痛いのですが、分娩の痛みが強いため、注射の痛みはまだマシだと聞きます。会陰切開の後に分娩が行われ、会陰切開部分の縫合に移りますが、局所麻酔が効いていない部分があるとこの縫合にも痛みがあります。無痛分娩ではこの縫合も痛みはありません。
後陣痛は無痛分娩の人にも自然分娩の人にも起こります。無痛分娩は後陣痛には使用しませんので、後陣痛は内服薬で対応させていただきます。
文責 院長

無痛分娩は安全なの?

2018年03月06日

無痛分娩を希望されている方で、『無痛分娩は受けたいけれども、大丈夫かしら』と心配されている方もいらっしゃるかと思います。
今回は皆様に安心して無痛分娩を受けていただけるように、無痛分娩の安全についてお話をしたいと思います。
最近の報告では無痛分娩は日本でも徐々に増えてきて現在全分娩の約6%は無痛分娩を受けていることがわかってきました。年々その割合は増してきています。無痛分娩の方法にもいろいろありますが、当院での麻酔方法は硬膜外無痛分娩となります。無痛分娩は医療行為であり、絶対に事故が起こらないとは言えません。しかし、無痛分娩を行わないほうが安全なのかというとそうとも言えないと考えています。無痛分娩を受けることによっても様々な恩恵を受けるからです。痛みがないことで不安がなくなる、心血管や呼吸器に負担がかからない出産ができる、緊急時の帝王切開にも対応ができることなどがその恩恵に当たります。
硬膜外無痛分娩で起こる事故の中で、生命を脅かす合併症は全脊椎麻酔と局所麻酔中毒です。全脊椎麻酔とは本来硬膜外という場所に入るべき局所麻酔薬が誤ってより神経に近い脊髄液中に注入されることで起こります。脊髄液中に薬剤が投与されると直ちにより強力に麻酔の効果があらわれ、通常以上に麻酔が広がる結果、身体全身に麻酔が効いてしまいます。局所麻酔中毒は局所麻酔薬が硬膜外でなく血管の中に注入されてしまうことで起こります。血管の中に注入されると全身に局所麻酔薬が流れ、意識低下や血圧低下など様々な症状が見られます。いずれも硬膜外に入るべき薬剤が髄液であったり、血管の中であったりと異なる場所に投与されることで起こってしまいます。硬膜外付近に脊髄液も血管があるために、このような合併症が起こることがあります。

我々が行う安全対策には以下のようなものがあります。

  1. カテーテルを脊髄液中や血管に入れない
    背中から針を刺してカテーテルを挿入する際に安全に、確実性の高い方法で挿入します。また医師も硬膜外麻酔に慣れた医師が行うことで、さらに安全性を高めます。安全の程度が少しでも下がるようでしたら無理にでも行うことはいたしません。
  2. カテーテルが脊髄液中や血管内に入ってしまってもすぐに気付くようにする
    カテーテル挿入後に適切な場所に挿入されているかの『ためし』の薬が投与されます。脊髄液中や血管内にカテーテルが入っている場合はこの時にわかります。『ためし』の薬の量でしたら、大きな副作用もありません。
  3. 確認を行う
    その後も医師や看護師からたびたび確認の質問を行ってまいります。無痛分娩を行っている間、我々は常に注意を払い、観察を行っています。
  4. もし異常事態が起こった場合、直ちに正しい治療を行う
    もし①、②、③を行っていたにもかかわらず、全脊椎麻酔や局所麻酔中毒が起こってしまった場合、直ちに治療を開始します。そのための訓練をスタッフは日常から学習、訓練をしています。早期に気づき、適切な治療が行われることで、危険な状態になる前に回復させることができます。
 
我々が行う無痛分娩は安全の上で成り立っています。安全が確保されたうえで安心できる無痛分娩を提供することが重要なことなので、もし安全が確保されない無痛分娩であれば行わないほうがいいでしょう。我々は日々無痛分娩について研鑽を重ね、安全で安心できる無痛分娩を受けていただけるように医療を行っております。
文責 院長

無痛分娩の種類

2018年01月24日

無痛分娩には様々な方法があります。当院で行われている方法は硬膜外麻酔(鎮痛)という方法になります。硬膜外麻酔と併用して脊髄くも膜下麻酔(CSEAとも呼ばれます)が行われることがあります。これも当院で行うことがありますが詳細はまた改めてご説明します。その他に点滴から痛み止めを入れる静脈麻酔、酸素や空気に麻酔薬を混ぜて、呼吸から痛み止めを入れる吸入麻酔、部分の神経に局所麻酔薬を入れるブロック注射などがあります。
それぞれにメリットデメリットがあり、時代や状況、環境に応じて適切な麻酔方法は異なります。
硬膜外麻酔は前回お伝えしたように少量の麻酔薬を使用することで安全に効果的に痛みを取ることができる一方で硬膜外に管を入れる必要あり、硬膜外麻酔ならではの副作用があります。
静脈麻酔は点滴が必要ですが、点滴さえあれば行えるため簡便です。硬膜外麻酔は背骨の一部の神経にのみ薬が効けばいいのに対し、静脈麻酔は全身に投与されるため、痛みを感じる脳に必要な量を投与するには薬の量も必然的に多くなります。量が多くなれば胎盤移行(胎盤を介して赤ちゃんに薬物が移行すること)も考えなければいけません。最近は鎮痛効果の高い超短時間効果のある静注用鎮痛薬も登場しましたが、その際は安全に行う配慮が医療従事者には求められます。
吸入麻酔はマスクを顔に当てるだけで数分で効果が得られるため最も簡便な産痛緩和法といってもいいでしょう。歯科麻酔などで利用したことがある方もいらっしゃるかもしれません。即効性、簡便性という部分では利点が多くみられますが、『無痛』となると投与量を増やす必要があり、意識が朦朧とし、強い眠気を自覚します。また過去の歴史で誤嚥性肺炎という合併症が存在するため、スタンダードとはなりません。もちろん薬剤は胎盤移行します。それでも簡便性という利点でたまに見かける方法になります。
神経ブロックに関してはその時々に応じて痛い部分の神経に局所麻酔薬を投与していく方法になります。これだけで無痛分娩をするとなると、多くの手技と麻酔薬が必要になり、かなり大変なことになるので、一般的ではありません。当院では硬膜外麻酔と併用して部分的に神経ブロックを行うことがあります。
そのほかに産痛緩和としてアロマテラピー、鍼、精神療法などもありますが、一般的ではありません。メリットとしては大きな副作用がないことになりますが、効果としては疑問視される点もあり、『無痛分娩を行いたい!!』と希望される妊婦さんのご期待に添えられるかは疑問です。もちろん効果があったという話は耳にしたことがありますが、万人に同様の効果があるかはわかりません。
 
当院では『安全』に『無痛』を実現できる方法を選択し、硬膜外麻酔(鎮痛)を主軸に、必要に応じてその他の痛み止めを行います。『痛みを取ること』も大切ですが、何よりも『安全であること』を最も大切なテーマとして痛みを取っていきます。
文責 院長

硬膜外無痛分娩とは?

2017年10月12日

当院で無痛分娩の際に使用される麻酔方法は硬膜外麻酔(鎮痛)というものになります。硬膜外麻酔は背骨の中にある硬膜という膜の外側に痛み止めを入れる方法になります。1900年ころより硬膜外麻酔は行われ、より確実により安全に進化してきました。硬膜外麻酔の歴史は無痛分娩の歴史の一部となっています。硬膜外麻酔のない時代の無痛分娩は麻酔薬を全身投与する方法でありましたが、この硬膜外麻酔の登場により、より安全に痛みを取ることができるようになりました。
硬膜外麻酔の説明には硬膜外が何かを説明する必要があります。脊髄神経は皆さんご存知でしょうか?例えばあなたが氷を触ったときに、『冷たい』、『固い』などの感覚を皮膚の神経が感じ、その感覚を背骨の中にある脊髄神経に電気信号で伝えます。脊髄神経に入ってきた信号はそこから脳に伝わり、『冷たい』、『固い』という感覚をあなたが脳で認識するわけです。一方で、『手を動かす』ときは、脳から脊髄神経に信号が伝わり、脊髄神経から手を動かす神経に伝わり筋肉を収縮させて動かします。脊髄神経はこういった信号の伝導の一部を担っています。この脊髄神経は脊髄液という液体の中に浮いています。例えば、豆腐は柔らかく簡単に崩れてしまうため水の中に浮かべることによって、崩れにくくして売られています。脳や脊髄神経も同じように水(脊髄液)の中に浮かべることで外の衝撃から守る作用があります。さらに脊髄液はくも膜という膜によって覆われています。くも膜には硬膜という硬い膜がくっついています。この硬膜の外側が『硬膜外腔』と呼ばれ、この場所に痛み止めを入れると、近くにある神経に作用します。『硬膜外腔』の外側には靭帯や骨があります。


図:脊髄周辺
(背中は下側になり、針は背中から入れる)


痛み止めの薬が神経に作用すると信号の伝導が遮断されるため、『痛い』『冷たい』といった感覚が脳に伝わらなくなり、痛みを感じなくなります。また『動かす』という神経も遮断されると動きづらくなることもあります。『触られている』という感覚は他の神経よりも薬が効きづらいため、麻酔中も触れられている感覚は残ります。麻酔の効きやすさは『痛み』>『動かす』>『触られている』になります。
無痛分娩では『痛み』は取り除き、少しだけ『動かす』の神経も遮断します。痛みは一切何も感じませんが、触られている感覚は残るため、麻酔と聞くと何も感じないと想像される方もいらっしゃいますが、お腹の張り(痛みではなく、収縮する感覚)を感じたり、脚を動かしたりすることができます。
脊髄はとても大切な神経なので、背骨によって守られています。皆さんの背中の真ん中を触ってみてください。頭からお尻まで骨がポツンポツンと触れることができると思います。背骨はこれらの骨がいくつも重なって構成されています。硬膜外麻酔はこの骨と骨の間に針を挿入し、硬膜外腔まで細い管を入れます。細い管を入れることができれば針は抜いて管だけ残してテープで固定します。テープで固定すれば仰向けになっても細い管がつぶれることはありません。必要な時に細い管から薬を入れて痛みをコントロールします。
全身に麻酔薬を投与する方法とは異なり硬膜外腔という小さなスペースに薬剤を入れるので、少量で十分な効果を発揮します。少量であるため、赤ちゃんへの移行もほんのわずかであり、問題にならないと考えられます。
『背中に注射をするのが不安』、『神経の近くに針を刺すことが不安』と話される妊婦さんもいらっしゃいます。痛みの程度は人にもよりますが、多くの方は思ったほど痛くはなかったと仰っていただいております。我々も痛みを取り除くための麻酔が皆様の負担にならないように心がけております。また、神経の近くに針を刺すことに関して、技術力がとても必要になります。経験と知識が豊富で、日頃より扱いに慣れている医師が行うことにより、合併症を極力防ぐことができます。多くの方が当院で無痛分娩を選ばれていることから、我々は日々硬膜外麻酔を行っており、日々安全な痛みのコントロールを行っています。
ご不明な点や不安に思う方は遠慮なくお申し出くださればまた改めてご説明いたします。
 

文責 院長

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