冬から春にかけて流行しやすい「伝染性紅斑」、いわゆる「りんご病」。ほっぺたが赤くなる特徴的な症状からこの名前が付いています。都内でも6年ぶりに流行拡大となっています。実際にはどのような病気なのでしょうか、また妊娠中に罹患すると、母体、胎児にどのような影響が出るのかお伝えします。

・伝染性紅斑とは

伝染性紅斑は「ヒトパルボウイルスB19」によって引き起こされる感染症で5~9歳の子どもの感染が多く見られますが、大人も感染することがあります。主に飛沫感染や接触感染で広がりますが、特徴的な発疹やほっぺたが赤くなる頃にはすでに感染力がほとんどなくなっていることが特徴です。

・症状について

症状は以下のように段階を追って現れます

  • 風邪のような症状

感染から4~14日後、微熱・倦怠感・軽い咳・鼻水などが現れることがあります。この時期には典型的な発疹は出ていません。

  • 頬の赤み

風邪のような症状が治まった数日後、両頬がりんごのように赤くなります。さらに、腕や脚、お腹などにレース状の発疹が現れることもあります。この時期にはもうほとんど感染力がなく、発疹は1~2週間で自然に消えていきます。

  • 再燃することも

日光や運動、入浴などによって発疹が一時的に濃くなることはありますが基本的には自然に消えていきます。

・大人が感染すると

子どもは比較的軽症で済むことが多いですが、大人は感染すると関節痛を伴うことがあり、数週間続くこともあります。特に妊娠中の女性が感染すると稀に胎児に影響を及ぼすことがあるため注意が必要です。

・妊娠中にりんご病に感染した場合

胎児に影響を及ぼす可能性があるのは主に20週未満の妊婦さんです。

➡なぜ20週未満が特に注意が必要なのか?

ヒトパルボウイルスB19は赤血球を作る「造血幹細胞」に感染し、赤血球の産生を一時的に抑えてしまいます。胎児の赤血球は母体よりも短命で作られるスピードも速いため、ウイルスの影響を受けやすく、胎児貧血や胎児水腫(いわゆる浮腫み)を引き起こすことがあります。特に妊娠12~20週頃に感染すると胎児水腫が発症しやすくなり、稀に流産のリスクが高まることが報告されています。

妊娠20週以降は胎盤の機能が発達し、胎児の造血能力も安定するため、感染しても重篤な影響を及ぼすリスクが低くなると考えられています。ただし、完全にリスクがゼロになるわけではないため、感染が疑われる場合はお電話にてご相談ください。必要時超音波検査などで経過を観察していきます。

・予防策について

  • 手洗い、うがいの徹底
  • りんご病が流行している場所(幼稚園や保育園)を避ける(上のお子さんがいる場合は難しいかもしれませんが・・・)
  • 家族や職場で感染者が出た場合はマスクなどを着用し、接触は最小限にする
  • 感染の可能性がある場合は抗体検査を受ける(当院は他の妊産婦さんも受診されるため感染していることが疑われる場合はまずお電話にてご相談ください)

➡抗体検査を実施して陽性になるまでは1~3週間ほどかかります。そのため感染直後(数日以内)では抗体が検出されない可能性が高いです。

・ヒトパルボウイルスB19の抗体について

ここで押さえておきたいことは、ヒトパルボウイルスB19の抗体には2つの指標が存在することです。

【IgM抗体】・・・急性感染の指標

感染後1~3週間で上昇し、1~3か月程度で消失します。IgM抗体が陽性の場合は比較的最近感染したことを意味します。

【IgG抗体】・・・長期免疫の指標

感染後2~3週間で上昇し、その後一生持続します。IgG抗体が陽性であれば過去に感染したことがあり、再感染のリスクは低いと考えられます。

上記より妊婦さんがパルボウイルスB19に暴露した可能性がある場合、IgG抗体が陽性であれば免疫があるため、感染の心配はあまりありません。一方でIgG抗体が陰性の場合は免疫がないため注意が必要です。当院でも希望される患者様にIgG抗体の有無を調べる血液検査をすることは可能です。(自費になります)

今年は関東地方ではかなり流行しており、警報レベルとなっている自治体も多いです。妊娠初期~中期の方は特に注意して頂くことが重要になります。

流行によってご不安に思われる方も多いかとは思いますが、なにか分からない事や、聞きたいことがあればお気軽にお問い合わせください。

文責 院長