今回は、冬の時期に流行しやすいと言われている感染性胃腸炎について、ノロウイルスを中心にお話ししていきたいと思います。
感染性胃腸炎とは、ウイルスや細菌などの病原体による嘔吐、下痢を主症状とする感染症です。中でもウイルス(ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス等)が原因となることが多いと言われています。
ノロウイルスは、全ての年齢で発症しますが、乳幼児や高齢者、もともと病気がある方など抵抗力の弱い方が発症すると重症化することがあります。
症状は、下痢、嘔吐、吐き気、腹痛といった消化器症状が主ですが、発熱する場合もあります。また、症状がひどい場合には、脱水症状を起こすことがあります。
ウイルスを原因とする感染性胃腸炎には、特別な治療法はなく、治療は輸液、整腸剤等の対症療法になります。脱水を予防するために、安静にし、水分補給をすることが大切です。吐き気が落ち着いてきたら、経口補水液等で少しでも水分を取るようにしましょう。水分も取れないくらい症状がひどい場合には、早めに医療機関を受診しましょう。産科的な症状(出血、下腹部痛、破水感、胎動減少感等)がなければ内科を受診して下さい。市販の下痢止め薬は、回復を遅らせることがあるので、使用については医師に相談してからにしましょう。
感染性胃腸炎の流行シーズンは、その流行時期に合わせて、毎年8月~9月初旬頃から始まり、翌年の1年間とまで長期に渡ります。その中でも、秋から冬にかけて、特に冬の時期に流行しやすいと言われています。気温が低く、空気が乾燥していて湿度も低い冬の環境下で、ウイルスの感染力は高まり、生息できる期間が長くなるためです。
実際に、県内外で感染性胃腸炎の罹患者数は増加しており、ノロウイルス等による集団感染の発生も目立ちます。だし、上記でもお話しした通り、感染性胃腸炎は年間を通じて発生する可能性があるので、感染予防(感染経路を断つこと)が大切です。
<感染性胃腸炎の感染経路>
・人から人への感染
感染者の嘔吐物や便を触った手や、手で触れたものを介して口に入り感染します。また、嘔吐物の飛沫から感染する場合もあります。人によっては、感染しても発症しないがウイルスを排出する場合があり、知らない間に周りの人に感染してしまっていることもあります。
・汚染された食品や水からの感染
食品取扱者がノロウイルスに感染しており、その者を介して汚染した食品を食べた場合、汚染されていた二枚貝を生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合、ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合に感染します。
<感染予防のポイント>
・こまめな手洗い
ノロウイルスは、アルコール消毒による効果がありません。そのため、調理前後、食事前、トイレの後などに、流水と石鹸による手洗いの励行に勤めましょう。また、手洗い後のタオルは共有せず、個人用タオルかペーパータオルを使用しましょう。食材や調理器具などを清潔に保つ(よく洗う、加熱・殺菌する等)ことも大切です。
・吐物や便等の適切な処理
ウイルスが乾燥して空中に漂い、その飛沫をわずかでも吸い込んでしまうことで感染するため、吐物や便等を処理する際には、「すぐに拭きとる・乾燥させない」、「綺麗に拭きとってから消毒する」、「十分に手洗いをする」といった点に気を付けて行いましょう。
ここまで感染性胃腸炎についてかいつまんでお話させていただきました。
胃腸炎症状に限らずですが、何か症状でお困りなこと等がございましたら遠慮なくご相談ください。
文責 院長