妊娠中の体重増加について、近年あまり重要視されていない様に感じられるので
体重増加、減少に関してお話ししたいと思います。
私見ですが、
- 私が母の体内に妊娠した時期(戦後食糧が不足している時期1940年~1950年代)には、よく言われる赤ちゃんの発育のため“おなかの赤ちゃんの分まで食べなさい”と言われ私の母たちは頑張った時代でした。その後、
- 我々の世代が妊娠した昭和のバブル時期(1970年~1980年)に母たちは自分の母親から言われた記憶から同様に“おなかの赤ちゃんの分まで食べなさい”と言っていました。その結果私の産婦人科医になった時点には、妊娠後期に妊娠高血圧症候群の患者さんが結構いらっしゃいました。
- その後、妊娠中の食事の過剰摂取は妊娠に良くないということとなり、妊娠中の食事に制限が加えられるようになり,その結果、低出生体重児の出生が増加するようになりました。
そして、現在では、体重管理に関しては言及しなくなりました。
では、体重は気にしなくていいのかというと、
体重増加では、妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病のリスクが高くなります。
妊娠高血圧症候群では、胎盤の機能が低下し、赤ちゃんに十分な酸素・栄養が送れず胎児発育不全・胎盤早期剥離・胎児死亡・母体の高血圧と共に母児ともに命にかかわります。
妊娠糖尿病に関しては、赤ちゃんが4000g以上の巨大児となり、子宮内胎児死亡・新生児低血糖・先天奇形・発育遅延・分娩も帝王切開の確率が上昇します。
また、妊娠中には腰痛・分娩時には子宮・産道に脂肪がつき出産が長引く可能性があります。
また、体重減少・増加がなかった妊婦さんでは、赤ちゃんが、低出生体重児(2500g以下)となり早産・死亡率の上昇にもなります。
「なぜ妊娠すると妊婦さんの体重が増えるのでしょうか?」
分娩時 一般的にトータル8kg増加
胎盤:約0.5kg 羊水:約0.5kg 妊娠して増加する血液・水分:約2kg
皮下脂肪:約2kg 赤ちゃん:約3kg
「適正体重は」 2021年厚生労働省改定

BMI=妊娠前の体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
妊娠各時期における体重増加の目安

体重管理のポイント
体重増加時期は:
1)つわりの時期 2)つわりが終わったタイミング
3)自宅安静時 4)産休 5)里帰り時 6)臨月に入ったタイミング
体重管理でのコツ
- バランスの良い食事 ビタミン・ミネラル摂取
- カロリー摂取に気を付ける 妊娠前2000Kcal摂取していたとすると、
妊娠初期 +50 妊娠中期 +250 妊娠後期 +450 - 糖分の摂りすぎに注意 ケーキ・お菓子の摂取は控えめに
- 塩分の摂りすぎに注意 1日6.5g摂取 高血圧・浮腫の原因に
- 無理のない範囲の軽い運動 適度なウォーキング(但し切迫早産注意)
マタニティー ビックス・ヨガ・水泳などインストラクターと行い勝手にしない
但し、水分摂取には注意 1日1.5~2L(体重1kgあたり約40ml)
毎日の体重管理
- 毎日体重を計測 毎日同じ時間に計測してできればグラフにしましょう
- 食べたものを記録する 体重アプリなど利用
- ダイエットは禁物 赤ちゃんの栄養に影響します
- 規則正しい食事摂取 夕食は早い時間に摂取
- ゆっくり食べる
- 野菜を多く、揚げ物・脂っこいものは控える
- おかずは薄めに味付け
- カフェインは控えめに 胎児の発育に影響します
以上、妊娠中の体重管理について述べましたが、妊娠したからと言って特別に構えるのではなく、赤ちゃんの発育を願いながら毎日の食生活を送られることをお勧めします。
妊娠中、食事など悩みがあれば、相談して快適に元気な赤ちゃんの誕生を願って過ごしましょう。
2025年7月 久松和寛