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院長と麻酔科医の無痛分娩あれこれ

2020年9月の記事一覧

無痛分娩で使用する薬について

2020年09月26日

今回は無痛分娩中に使用する薬剤についてご説明します。
知っておくことで実際に受けた時に安心して出産できると考えております。
 
①アナペイン
局所麻酔薬と呼ばれるものの一つです。神経細胞に働き、痛みの信号を止めてくれます。痛みの信号以外に運動の信号も少し止めてしまうため、軽い脚の動きづらさがでます。脚が痺れる感覚もこの薬が原因です。アナペインはより安全な局所麻酔薬を開発していく中で2001年8月7日本邦で発売となりました。それまでは後述するキシロカインのように運動神経の抑制が強い薬剤や、マーカインと呼ばれる局所麻酔薬は大量投与時に心配される局所麻酔中毒に対し懸念がありました。アナペインはこれらの問題点を解決し、運動神経の抑制は弱く、局所麻酔中毒も重篤化しにくくなりました。

②フェンタニル
医療用麻薬の1つです。手術や癌の疼痛管理として古くから使用されており、妊婦さんに対しても大変多くの使用経験があります。脊髄にある受容体に作用し、痛みの信号を遮断することで鎮痛効果があります。痒み、吐き気などが副作用としてあります。従来局所麻酔薬のみで無痛分娩を行っていましたが、局所麻酔薬単独では濃い濃度を大量に使う必要がありました。ところがフェンタニルを局所麻酔薬に混合して投与することで、局所麻酔薬を薄く少なくすることに成功し(相乗効果といいます)、脚も動きやすく、局所麻酔中毒にもなりにくく安全な無痛分娩を行えるようになりました。

③キシロカイン
本邦で使用される局所麻酔薬としては最も一般的と言われる薬剤で他の局所麻酔薬より歴史も古いため、安全性も高いです。歯科麻酔などでも使用されます。
特徴として早く効いて早く切れるという特徴があります。
無痛分娩では早く痛みを取りたい場合や強い痛みが出た時に使用されます。
また、硬膜外カテーテルを挿入する際の皮膚の麻酔や、硬膜外カテーテルが硬膜外に入っているかを確認するための試験投与にも使用されます。
キシロカインアレルギーがある方は事前にお申し出ください。

④マーカイン
局所麻酔薬の一つで帝王切開の際に脊髄くも膜下麻酔で使用されます。
歴史的にはキシロカインとアナペインの間になります。
アナペインと同様にキシロカインよりも長く作用します。
 
①、②の2薬剤が無痛分娩で多く使用される薬剤で、ほとんどの方がこの2剤の組み合わせだけで痛みが取れます。
多くの使用経験もあり、科学的に妊婦さんにも安全に使用できる薬剤を使用して、出産に臨んでいただきたいと思います。

無痛分娩中に起こる痛み(その2)

2020年09月19日

前回はお産に関わる痛みを取り上げました。
今回は入院中に起こるお産以外の痛みを取り上げます。

①点滴の痛み
出産を行う場合、安全のためと子宮収縮剤投与のために点滴をします。インフルエンザ予防接種とは違い、血管内にカテーテルを留置するものになります。カテーテルは柔らかい素材なのですが、入っていることで多少の違和感はあります

②硬膜外カテーテル挿入の痛み
陣痛の痛みを取り除くための麻酔(注射)ですが、これもちょっと痛いです。局所麻酔をして硬膜外無痛分娩のためのカテーテルを挿入しますが、局所麻酔をする注射がちょっとだけ痛いです。そのあとの太い針を刺しますが、痛みはほとんどありません。もし痛みを感じた場合は局所麻酔を追加するので仰ってください。硬膜外カテーテル挿入は神経の近くに挿入するので『ゴソゴソする感じ』はあります。時に響く感じがあるので、それも教えてください。

③内診、頸管拡張の痛み
外来でも行っている診察を行いますが、計画分娩ではまだ頸管(子宮の出口)が広がっていない場合は頸管拡張といって、頸管を広げるために風船を入れます。風船で物理的に広げておくことで、スムーズにお産になるようにします。これも少し痛いです。

④分娩後の痛み
分娩後の子宮は出血を抑えるために収縮する必要があり、生理痛に似た(時により強い)痛みがでます。特に経産婦さんに強く出ます。それ以外に会陰切開を行った場合や会陰部が裂傷などで裂けた場合は縫合をしますが、その傷跡が痛むことがあります。会陰切開や会陰裂傷などを起こした場合、縫合をします。縫合する糸は吸収されますが、気になる場合は退院時に抜糸することもあります。
 
入院中のお産以外での痛みについて触れました。せっかく無痛分娩を選んでいただいている以上、なるべくそれ以外のことも痛みがないようにしたいと思っています。痛み止めのシールを貼ったり、定期的に鎮痛薬を内服するなど、様々な方法で痛みを軽減するように対応します。

無痛分娩中に起こる痛み

2020年09月11日

当院の無痛分娩は完全無痛分娩と銘打って痛みをゼロにするように管理いたします。
しかし、時として一時的な痛みが出る場合などがあるのでご説明します。

①麻酔の開始時
麻酔を開始する前はもちろん痛みます。開始時期はいつでも構いませんが、なるべく痛みを感じたくないのであれば早めの開始が良いでしょう

②突発痛(break-through-pain)
最初は痛くなかったのに、分娩が進むことで下腹部、腰、会陰部が痛くなることがあり、これを突発痛(break-through-pain)と呼びます。分娩が進行することで痛みが強く広範囲に出るため痛みが出ることがあります。予防的に薬は入れていますが、途中で痛みが出た場合は早めに教えてください。追加することで痛みが緩和されます。

③回旋異常
通常赤ちゃんは回りながら分娩に至りますが、回旋異常とはその回り方が通常と異なる向きで進むことで、痛みが出てしまいます。薬を変えることで痛みが緩和されます。

④カテーテル位置異常
硬膜外カテーテルは硬膜外という背骨の中にある空間に管を挿入するのですが、ほとんどの場合真ん中にあることはなく、右か左に寄っていることがほとんどです。それでも左右に効いていれば問題ありませんが、極端に左右にずれている場合は片側にのみ鎮痛効果が出てしますことがあります。またカテーテルが抜けてしまったりすることもあります。この場合、カテーテルを調整や、刺し直しを行います。

⑤麻酔効果不十分
麻酔効果は人によって多少の違いがあります。同じものを使ってもお腹の張りも感じず足も動かなくなる人もいますし、痛みを感じる人もいます。多くの方が痛みがない濃度と量を用いますが、麻酔に強い妊婦さんにはお薬を変更して痛みを緩和します。

⑥脊椎や硬膜外の解剖学的異常
硬膜外腔には血管や隔壁、脂肪などがあり、薬剤の広がりの妨げになることがあります。他にも変形やヘルニアなど薬の広がりに物理的影響がある場合があります。麻酔薬の量を増やしたりして、麻酔を広げることで痛みを緩和します。
 
色々書いてしましましたが、多くの方は痛みを感じることなくお産になりますのでご安心ください。またこれらの痛みが出た場合もなるべく早く痛みを取り除く対策を講じますので心配せずに臨んでください。

硬膜外鎮痛は無痛分娩だけでなく様々な場所で利用されている

2020年09月04日

当院で行われている無痛分娩は硬膜外鎮痛(麻酔)と呼ばれる方法ですが、この方法は無痛分娩にのみ使用されているわけではありません。
私が麻酔科医になった時に初めて見た硬膜外麻酔は手術を受ける患者さまに対して行われていました。陣痛の痛みをゼロにまでしてくれる方法なので、術後の痛みにも有効です。特に呼吸器外科や上腹部手術(胃癌や食道癌など)ではとても有効です。これらの手術(呼吸器外科や上腹部手術)は呼吸によって傷口の痛みが出てしまうため、痛みがあることで呼吸すら辛く、また痰を出すことにも痛みが出るので痰が出し辛く、呼吸器合併症が増加してしまいます。硬膜外麻酔を行い痛みを取り除くことでこれらの合併症を軽減させます。ほかにも腸管を動かす作用もあり、術後の腸閉塞の頻度を下げたり、他にも血栓予防効果や、心血管系への優位性を示すデータがあります。呼吸器外科、上腹部手術にも下腹部手術(帝王切開)、股関節や下肢手術でも使用されますし、ペインクリニック外来では腰痛などの治療にも行われます。
無痛分娩だけでなく、様々な医療現場で幅広く使用されている硬膜外鎮痛についてご紹介させていただきました。

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