2023年06月09日
一般的に上手いとされるもう一つの条件は適切な位置にカテーテルを入れる確率が高いことです。一部のインターネットの書き込みにあるように、片効き(片側だけしか効かず、もう片側が痛かった)、麻酔が広がらない(途中から痛かった、あるいはどこか痛い場所があった)など適切にカテーテルが挿入されていないと、痛みがしっかりとれません。さらにはクモ膜下迷入や血管内迷入など、合併症が起こってしまう場所に入ってしまうことは避けたいところです。しかし、硬膜外カテーテルの挿入は賽銭箱にお賽銭を入れる感覚とは異なります。目で硬膜外という場所を入れているわけではなく、目で見えない場所に背骨の触れる感覚や針の感覚などで目星をつけながら硬膜外腔を見つけます。お賽銭すら賽銭箱から外してしまう光景があるように、直接硬膜外を目で見ることなく、カテーテルを挿入するので確実に1回で成功するとは限りません。過去の報告では麻酔科医としての経験年数長いほど成功率は高まる報告もありますが、ベテランでも上手でない人はいます。超音波器具を用いて硬膜外腔を同定し挿入する方法も行われていますが、超音波の手技も必要で、多くの施設で導入されているわけではありません。慣れている我々でも100%の成功率ではありませんし、100%1回で挿入できる医師はいません。もし効いていないときや、血管内迷入など異常であった場合、すぐに診断し、カテーテルの再挿入をしっかりやってもらうことがとても重要になります。結果的に、痛みが取れ、安全に分娩することにつながります。
もし痛みを感じた場合、何か変だなと思った場合はすぐにスタッフに伝え、改善したもらいましょう。
2023年06月02日
我々が無痛分娩で行う硬膜外鎮痛にはカテーテルと呼ばれる細い(直径1mmくらい)管を硬膜外という場所に入れてくるわけですが、入れる手技にうまい下手があります。
一般的に上手いとされる条件の一つにカテーテルの挿入が痛くないことです。慣れている医師は時間もかからず入れることができますので、それほど痛みもありませんが、慣れていない医師は何回も失敗を繰り返したり、時間がかかれば手技も雑になってしまい、痛い手技になってしまいます。ここを見分けるポイントはスタッフに『個々の先生は背中の麻酔は上手ですか?痛くないですか?』と聞けば教えてくれるかもしれません。ある程度は経験もあると思いますが、何十年やってもうまくならない人もいるので、スタッフに聞くのが確実だと思います。
次回はもう一つの上手いとされる条件についてお話ししたいと思います。
2023年05月26日
安全な無痛分娩を受けるためにクリニック、病院をしっかり選ぶということはとても重要だといままでもコラムや書籍の中で話をしてきました。帝王切開を受ける際もやはりクリニック、病院選びが重要になります。今回は帝王切開でなぜ病院選びに重要かについてお話をしたいと思います。
15年ほど前のデータですが、帝王切開の麻酔を誰が行っているのかというアンケートを全国で行ったデータがあります。これによると、病院では59.1%、診療所では14.6%、全体として42.1%の施設で麻酔科医が帝王切開の麻酔を担当する割合でした。逆に言うと病院でさえ4割で、診療所では1~2割ほど、全体としても半分以上は麻酔科医以外(多くは産科医)が担当している現実があります。 帝王切開の麻酔の多くは脊髄くも膜下麻酔という方法で、麻酔科医でないとできない手技ではありませんが、麻酔科医が行うことで多くのメリットを享受することでできると思います。帝王切開を受ける病院もしっかり吟味する必要があります。
2023年05月19日
無痛分娩を行う際は血圧計、経皮酸素飽和度、呼吸数など機器を装着し、モニターする必要があります。比較的軽微な合併症から、非常に稀だけれども重篤な合併症などを見逃さないために、必ず行う必要があります。その中でも、妊婦さん自身が今どんな感じかを伝えてもらうことが、最も鋭敏で、重要な指標だと思っています。
例えば、硬膜外カテーテルを挿入した際にテストドーズといって、少量の局所麻酔薬を投与することで、間違ったところに入っていないかどうかを確認する方法があります。間違ったところに入っていると、血圧が下がったり、不整脈が出たりしますが、症状として、めまい、耳鳴り、味覚異常、意識障害、足が動かないなどの症状を呈します。血圧や不整脈の異常は必ずしも起こるわけではなく、妊婦さんの症状に注目することで、わずかな異常でさえも見落とさないことが、重篤な合併症を予防するために重要なことだと考えています。 無痛分娩中、スタッフから再三「変わったことはないですか?」「足は動かせますか?」など聞かれると思いますが、いずれも安全確認のための手順ですので、ご協力お願いします。
2023年03月03日
当院では側弯症のある妊婦様の無痛分娩も承っております。
他院で側弯症があるために無痛分娩を断られた妊婦様も当院で無痛分娩を受けていただいております。
側弯症は背骨が彎曲したり、回転していることで、硬膜外カテーテルの挿入が困難なことがあります。背骨を皮膚から触っただけでは明らかに大きな側弯であればわかりますが、軽度の側弯や回転はわかりづらいです。そのため事前にMRIをご案内させていただくことがあります。画像検査を行いことで、どのくらい曲がっているのか、回転しているのかを把握し、その画像を地図にして硬膜外カテーテルの挿入を行います。
実際に当院で側弯症が原因で無痛ができなかった方は今までいらっしゃいません。 もし迷われている方はお話を聞きに来てくださるだけでも構いませんのでいらっしゃってください。