2018年03月22日
分娩は痛みを伴います。『鼻からスイカ』なんて表現を聞いたことがある方も多いとは思いますが、鼻にスイカを入れた方はいらっしゃらないでしょうから、想像はできても、この表現が正しいかどうかはわかりません。そのくらい痛いということでしょう。今日は分娩の痛みをテーマにお話ししたいと思います。
分娩の痛みは経過によって強さや場所が異なります。
子宮の出口が開くまでの間は赤ちゃんは子宮の中にいて、子宮が収縮することで赤ちゃんの頭が子宮の出口を徐々に押し広げることになります。痛みは主に子宮の痛みになるので生理痛の時と同じ場所になります。痛みの強さは人によって生理痛は異なるので難しいですが、徐々に痛くなり、最終的には生理痛の痛みを超える強さになります。下腹部痛以外にも腰の痛みが出ることもあります。
子宮の出口が開いてくると赤ちゃん頭が徐々に下がってくるので会陰部に圧迫感が出てきます。さらに分娩が進み赤ちゃんの頭が産道を通ってくると痛みは腰、会陰部に広がります。当然子宮は収縮しているので、今までの痛みに加えて会陰部、腰の痛みが出てきます。狭い産道を赤ちゃんが通ってくるため、お母さんの骨盤も強い圧迫から形が変形します。骨盤はいくつかの骨で組み合わさり構成されています。骨と骨とが靭帯で繋がっていますが、この靭帯が緩み骨の変形ができるようになります。負担は靭帯のある恥骨と腰としっぽの名残のある仙骨部にかかり、これらの場所が腰痛、恥骨痛として痛くなります。
いざ出産というときに最後の会陰部の進展が不十分で赤ちゃんによって、裂けてしまいそうな場合は会陰切開が行われることがあります。無痛分娩が行われない施設で会陰切開を行う場合は切る部分に局所麻酔の注射をして切開を入れます。この注射も痛いは痛いのですが、分娩の痛みが強いため、注射の痛みはまだマシだと聞きます。会陰切開の後に分娩が行われ、会陰切開部分の縫合に移りますが、局所麻酔が効いていない部分があるとこの縫合にも痛みがあります。無痛分娩ではこの縫合も痛みはありません。
後陣痛は無痛分娩の人にも自然分娩の人にも起こります。無痛分娩は後陣痛には使用しませんので、後陣痛は内服薬で対応させていただきます。
2018年03月06日
無痛分娩を希望されている方で、『無痛分娩は受けたいけれども、大丈夫かしら』と心配されている方もいらっしゃるかと思います。
今回は皆様に安心して無痛分娩を受けていただけるように、無痛分娩の安全についてお話をしたいと思います。
最近の報告では無痛分娩は日本でも徐々に増えてきて現在全分娩の約6%は無痛分娩を受けていることがわかってきました。年々その割合は増してきています。無痛分娩の方法にもいろいろありますが、当院での麻酔方法は硬膜外無痛分娩となります。無痛分娩は医療行為であり、絶対に事故が起こらないとは言えません。しかし、無痛分娩を行わないほうが安全なのかというとそうとも言えないと考えています。無痛分娩を受けることによっても様々な恩恵を受けるからです。痛みがないことで不安がなくなる、心血管や呼吸器に負担がかからない出産ができる、緊急時の帝王切開にも対応ができることなどがその恩恵に当たります。
硬膜外無痛分娩で起こる事故の中で、生命を脅かす合併症は全脊椎麻酔と局所麻酔中毒です。全脊椎麻酔とは本来硬膜外という場所に入るべき局所麻酔薬が誤ってより神経に近い脊髄液中に注入されることで起こります。脊髄液中に薬剤が投与されると直ちにより強力に麻酔の効果があらわれ、通常以上に麻酔が広がる結果、身体全身に麻酔が効いてしまいます。局所麻酔中毒は局所麻酔薬が硬膜外でなく血管の中に注入されてしまうことで起こります。血管の中に注入されると全身に局所麻酔薬が流れ、意識低下や血圧低下など様々な症状が見られます。いずれも硬膜外に入るべき薬剤が髄液であったり、血管の中であったりと異なる場所に投与されることで起こってしまいます。硬膜外付近に脊髄液も血管があるために、このような合併症が起こることがあります。
我々が行う安全対策には以下のようなものがあります。
我々が行う無痛分娩は安全の上で成り立っています。安全が確保されたうえで安心できる無痛分娩を提供することが重要なことなので、もし安全が確保されない無痛分娩であれば行わないほうがいいでしょう。我々は日々無痛分娩について研鑽を重ね、安全で安心できる無痛分娩を受けていただけるように医療を行っております。