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院長と麻酔科医の無痛分娩あれこれ

無痛分娩についての記事一覧

無痛分娩中の過ごし方

2020年08月01日

無痛分娩中は妊婦の皆様に過ごし方について、いくつかお願いがあります。
①立ち歩くことはできません
痛みの神経だけでなく、運動神経も少しブロックするため、立ち上がろうとすると転んでけがをしてしまうかもしれません。そのため、ベッド上で過ごしていただきます。
脚が全く動かないというわけではありません。いつものように軽やかな動きはできないということです。
②食べることはできません。
絶対に食べてはいけないというわけではないのですが、無痛分娩中、食事は控えていただきます。理由として、食べ物を食べていると吐き気の原因になること。そして吐いたものを誤って肺に吸引して肺炎を起こすことを避けるためでです。
お腹が減ってしまいますよね。
ごめんなさい(-_-;)
 
一方で以下のようなことは行って構いません
①ベッド上では動いても構いません
前述したように歩くことはできませんが、ベッド上で横を向いたり、座ったりすることはできます。麻酔や点滴の管は抜けないように固定してありますので、動いても大丈夫です。麻酔をしているからとジッと動かない方もいらっしゃいますが、動いて構いません。
我々としてもある程度は動いていただいたほうがいいと考えます。
脚を動かさないまま過ごしていると深部静脈血栓症になってしまうことがあります。エコノミークラス症候群と同じものですが、動かさなくなった脚の血流がうっ滞することで、血栓ができてしまいます。
他にも、麻酔が効いているため、通常ですと足が痛くなることがあっても痛くありません。踵(かかと)や踝(くるぶし)など、脂肪や筋肉がついていない場所が一定時間圧迫を受けると、皮膚が赤くなってしまいます。
定期的に足を動かしたり体勢を変えるようにしましょう。またこちらからこのような体勢にしましょうと指示することもあります。
②一部の飲水は可能です
食べることはできませんがOS-1の飲水は可能です。OS-1は他の飲料と比較し早く胃から吸収されるため安全に飲水でき、吸収されたものは血管に入るため脱水予防にも有効と考えています
 
具体的にはどのように過ごしているでしょうか?
①携帯電話
電話でお話をしている方もいらっしゃれば、アプリを操作されている方もいらっしゃいます。皆様必ずと言っていいほど手元にあり、分娩時も身近に置いてあります。
②読書
趣味の本、赤ちゃんの名前や育児の本など時間があるので本を持参される方もいらっしゃいます。
③名前を考える
産まれるまでにまだ名前を決めてない方も多いです。候補がいくつかというかたもいます。この時間を利用して名前を考える方もいます。
④音楽を聴く
大好きな音楽、リラックスできる音楽を聴き、ゆったりとした時間をお過ごしの方もいます。
④その他
睡眠不足も続いていることでゆっくり休まれる方もいらっしゃいます。また一人になる時間も赤ちゃんが産まれるまでの残り少ない時間を使って、思い出作りなど素敵な時間に当てられる方もいます。
 

側弯症がある方の無痛分娩について

2020年07月27日

時々外来で「側弯症があるのですが、無痛分娩はできますか?」と尋ねられることがあります。側弯症にもいろいろあり、可能な場合と対応が難しい場合があるのでご説明します。

側弯症は思春期の頃に起こり始め、女性のほうが多いです。肩の高さの違いや、前屈して背中の左右差を見るなど学校で行った経験を持っている方も多いと思います。本来まっすぐになっているはずの脊椎が左右に弯曲します。先天的に側弯症を持っている方もいらっしゃいます。

硬膜外麻酔を行う際、脊椎に対しまっすぐ針を刺し、カテーテルを挿入するわけですが、側弯症の場合は脊椎が弯曲し、その弯曲に合わせて脊椎が回転している場合があります。すると脊椎にまっすぐ針を刺しても硬膜外にカテーテルが入らない場合があります。弯曲や回転に合わせて針を挿入しますが、困難な場合もあります。またカテーテルが入っても右や左に寄ってしまうこともあります。
過去の経験からはなるべく側弯症の方にも無痛分娩を受けていただき、対応させていただいてます。側弯症の方でも硬膜外カテーテルを挿入し、痛みも取れるので、側弯症というだけで無痛分娩ができないということはありません。ただし、側弯症が強い場合などは、針を挿入してもうまく入らないケースもあります。

また手術を行って、脊椎に金属が入っている場合は当院では無痛分娩をお断りする場合があります。金属が入っていると感染が起きやすく、カテーテルを介して、感染してしまった場合、金属を抜かなければならない可能性があるためです。ご相談ください。

硬膜外無痛分娩が受けられない場合

2020年02月15日

時々外来にいらっしゃる妊婦様で「無痛分娩が受けらえますか?」と尋ねられることがあります。硬膜外無痛分娩は一部の方には向いておらず、そのような場合はご説明し、必要によっては他院で紹介させていただくことになります。

A. 硬膜外無痛分娩ができない方
① 出血傾向のある方

硬膜外無痛分娩は背中の神経の近くに針を刺すことになります。その際に血管を傷つけ出血することがあります。正常ですと血はいずれ固まり、自然に止血されますが、出血傾向のある方は止血されず出血が続き、血腫となり神経を圧迫し、神経症状がでてしまいます。そのため、出産前には必ず採血で皆様が出血傾向でないかどうかを確認しております。

② 腰椎を手術し人工物が挿入されている方

以前に腰の手術を行い、その際に人工物が腰椎に挿入されている方がいます。人工物は感染に弱く、硬膜外無痛分娩を行い、カテーテルを挿入する際に、挿入されていた人工物が感染してしまった場合、人工物を除去する手術が追加で必要になってしまうかもしれません。またこのような妊婦さんの場合、帝王切開になった場合も帝王切開の麻酔である『脊髄くも膜下麻酔』は避けたほうが良い場合があります(同じ理由)ので、24時間麻酔科医が滞在する病院に紹介させていただいたほうがよろしいかとおもいます。

③ 腰の針を刺す場所に感染が起こっている方

硬膜外にカテーテルを挿入する際は厳重に消毒し、我々もマスクや清潔な手袋を装着し、感染予防に注意しながら行います。菌やウイルスを神経の周囲に持ち込むと感染を起こし、髄膜炎、硬膜外膿瘍などになってしまいます。もともと針を刺す場所が感染していた場合、針を刺すことで菌やウイルスを神経周囲に持ち込んでしまい、様々な合併症を起こしてしまうため、硬膜外無痛分娩は適しません。
 

B. 硬膜外無痛分娩が難しい可能性のある方:硬膜外無痛分娩ができないことがあります
① 病的肥満の方

病的肥満の方の場合、皮膚から硬膜外腔までの距離が長くなり、難しくなることがあります。当院の施術者は硬膜外鎮痛に慣れておりますので、できないということはないと思いますが、時間はかかるかもしれません。

② 腰椎の手術をしたことがある方(人工物なし)

人工物が入っていないので感染については正常な方と変わりないと思いますが、腰椎の手術をしたことで、針を刺す周囲が癒着、変形している場合があります。これらは穿刺を難しくするだけでなく、硬膜外無痛分娩で使用する薬剤の広がりにも影響を与えるかもしれません。

③ 側弯症など脊椎の変形が著しい方

通常背骨はまっすぐですが、側弯症などでは背骨が弯曲しています。硬膜外カテーテルは曲がった背骨に沿って挿入することになりますが、骨の様子は皮膚を通してみることはできませんので、時間がかかることがあります。

④ 脊髄神経疾患のある方

一部の脊髄神経の病気をお持ちの方は硬膜外鎮痛に不向きな方がいらっしゃいます。疾患によって対応は異なりますので、お尋ねください。

⑤ 局所麻酔アレルギーのある方

局所麻酔アレルギーがあるかたは事前にご申告ください。一番多いのはキシロカインアレルギーですが、もしアレルギーがあるかたは、それ以外の薬剤を用い、慎重に無痛分娩を行います。

『硬膜外無痛分娩ができない方』、『硬膜外無痛分娩が難しい可能性のある方』いずれの場合も、状況によっては硬膜外無痛分娩を行えることもあるかもしれませんし、代替手段があるかもしれません。ご不明な点は当院までお問い合わせください。

安全な無痛分娩を行うために求められる医療体制(診療体制について)

2020年02月01日

2018年3月29日付で無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究グループ(代表海野信也)が公表した『無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言』についての解説第3回です。今回がこの提言開設の最終回です。提言の内容としては他の内容にも提言を行っていますが、学会へのインシデントアクシデントの報告やワーキンググループ設置などこのコラムの中での開設の必要はないと考え、今回が最後の解説となります。
今回は『診療体制』についてです。

提言の中で無痛分娩麻酔管理者、麻酔担当医、無痛分娩研究修了助産師・看護師を配置することとなっています。
① 無痛分娩麻酔管理者はその施設での無痛分娩の責任者であり、助産師や看護師の教育、施設方針、無痛分娩マニュアル、危機対応シミュレーション開催などが仕事になります。 無痛分娩麻酔管理者になれる要件として、常勤医師、麻酔科標榜医以上または産婦人科専門医、定期的な講習会受講が挙げられます。
② 麻酔担当医はその施設で無痛分娩を実際に行う者です。妊婦さんの観察、薬剤投与、記録と管理、麻酔開始直後の妊婦さんの集中的管理、無痛分娩中は迅速に対応できるように待機などを行います。 麻酔担当医の要件として、麻酔科標榜医以上または産婦人科専門医、定期的な講習会受講、十分な能力(硬膜外麻酔100例以上、安全確実な気管挿管)が挙げられます。
③ 無痛分娩研修修了助産師・看護師は母子ともに安全で家族も納得のいく分娩を支援、異常が児予測される際に医師と連携し安全を確保、無痛分娩中の全身状態やバイタルサインの観察を行い報告します。 無痛分娩研修修了助産師・看護師の要件には新生児蘇生ができる(NCPRの資格※1)、定期的な講習会受講などがあります。

安全管理対策として、無痛分娩マニュアルや無痛分娩看護マニュアル作成、施設内勤務者が参加する危機対応シミュレーションを少なくとも年1回施行する必要があります。 それ以外にも緊急時に必要な設備、医療機器などを取りそろえておく必要があります。 設備や機器として、気管挿管を行うための器具、除細動器、生体モニターなど 薬剤はアドレナリンなどの強心剤、プロポフォールなどの鎮静薬、ロクロニウムなどの筋弛緩薬など

今回紹介した提言が無痛分娩を行う施設で必須化されれば、どこの施設でもある程度安全な無痛分娩は行えると考えられます。しかし今回の提言には強制力はなく、各医療施設が自主的に提言をもとに安全管理を行っています。そのため、安全な無痛分娩を行うためには無痛分娩を受ける妊婦の皆様と家族の皆様が十分に調べたうえで施設を決めることが重要になるでしょう。
※1NCPR:周産期新生児医学会の新生児蘇生法普及事業が行っている新生児の心肺蘇生法になります。

安全な無痛分娩を行うために求められる医療体制(情報公開について)

2020年01月24日

2018年3月29日付で無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究グループ(代表海野信也)が公表した『無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言』についての解説第2回です。
今回は『情報公開』についてです。

無痛分娩を受けたいと妊婦さんあるいは家族の皆様が思ったときに、通いたいと持っている医療機関が安全に無痛分娩を行えるのかなど無痛分娩についての情報を知る機会が必要になります。そこで提言の中で無痛分娩を行っている施設は情報を開示する必要があると提言しています。
『無痛分娩取り扱い施設は、無痛分娩を希望する妊婦とその家族が、分かりやすく必要な情報に基づいて分娩施設を選択できるように、無痛分娩の診療体制に関する情報をウェブサイトなどで公開すること』とあります。
具体的には無痛分娩の診療実績、説明文書、方法、急変時の体制、危機対応シミュレーション実施歴、無痛分娩麻酔管理者および麻酔担当医の麻酔科研修歴、無痛分娩実施歴、講習会受講歴などです。
これらの内容は各医療施設のホームページからも確認できますが、JALA(無痛分娩関係学会団体連絡協議会)のホームページから無痛分娩施設検索をクリックし、施設ごとの内容を確認することもできます。
現在JALA登録施設数は2019年12月11日の時点で85施設とまだまだ掲載していない施設も多く、充実した内容が求められます。
無痛分娩を行った施設が何も調べないために運悪く、十分な安全体制の整っていない施設でないことを防ぐために事前に調べることも大切だと考えます。
当院の場合はホームページ上に情報を掲載するとともに、JALAにも登録しております。

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