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院長と麻酔科医の無痛分娩あれこれ

無痛分娩中に測定すること

2020年11月16日

今回は無痛分娩の場合に行うモニターについてご紹介します。これらのことは無痛分娩を希望しない場合も測定することはあります。
 
①血圧
血圧が下がっていないかどうかを定期的に確認します。硬膜外鎮痛を行うと、痛みも取り除きますが、血管拡張により血圧低下が起こることがあります。血圧が低下した場合は輸液を増やしたり、昇圧剤を使用し直ちに血圧を正常化します。
②経皮的酸素飽和度・パルスオキシメータ
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、これは指につける装置で、リアルタイムに血液中に含まれる酸素の量を測定することができます。昔は皮膚の色を見て判断したり、正確な客観的な測定には採血以外にはなく、連続的な測定などはできませんでした。この装置の登場によりリアルタイムに、正確に、非侵襲的に測定することができ、全身麻酔が格段に安全にできるようになりました。
最近では新型コロナウイルスの影響で一般の方でも聞いたことがあるかもしれません。
この経皮的酸素飽和度を測定するパルスオキシメータの原理は日本光電の青柳卓夫先生が発明しました。同じ日本人として大変誇らしいことですね。
全脊椎麻酔や広範囲の麻酔など呼吸抑制が起こると低下します。
③心電図
心臓の動きを電気信号で読み取り波形にします。不整脈や心臓の筋肉の酸素が不足していないかなど多くの情報が非侵襲的(痛みがなく)に連続的に得られます。局所麻酔中毒などで不整脈が出ないか、早期発見します。
④胎児心拍モニター
赤ちゃんの心音と、子宮の収縮をモニタリングします。このモニターで赤ちゃんが苦しくないかどうかを見ています。
⑤体温
無痛分娩を行うと体温が上昇することがあります。そのため、定期的に体温を測定し、発熱がある場合には補水やクーリングなどで熱が上がりすぎないようにします。無痛分娩に伴う発熱の原因は新型コロナなど感染症とは異なります。
 
これらのモニターの情報は非侵襲的(痛みがなく)で簡便でかつ情報量が多いため測定します。JALA(無痛分娩関係学会団体連絡協議会)でも使用が推奨されており、より安全な出産になるように心がけております。

麻酔科医ってなんですか?(その1)

2020年11月09日

当院には常勤非常勤含めて3人の麻酔科医がいます。
最近ではドラマ(医龍、ドクターXなど)や本(麻酔科医ハナなど)の影響で麻酔科医という名前が浸透してきましたが、麻酔科医とはどのような仕事なのでしょうか?東京マザーズクリニックでは無痛分娩や帝王切開の麻酔を管理しますが、麻酔科医の仕事のほんの一部に過ぎません。他にどのような仕事をしているのでしょうか?
 
麻酔科医としてまず学ぶことは手術麻酔です。癌の手術など全身麻酔を必要とする場合、必ず麻酔科医が必要となります。麻酔科医は国家資格(麻酔科標榜医)であり、全身麻酔ができるのはこの資格を有しているものに限られるためです。手術麻酔の中にもサブスペシャリティとして、心臓麻酔、小児麻酔、産科麻酔があります。
その他にペインクリニック、集中治療、緩和医療、救急などかなり様々な分野に麻酔科医がいます。
麻酔科医は手術麻酔を学んでおりますので、人工呼吸、気管挿管をはじめ心肺蘇生や昇圧剤などに習熟している科です。普段の皆様の生活では風邪をひいたら内科や小児科、けがをしたら外科のように麻酔科医と関わることはなく、無痛分娩や帝王切開で初めて麻酔科医を知る方もいらっしゃるでしょう。
当クリニックの助産師、看護師は無痛分娩や帝王切開のための麻酔管理の教育を麻酔科医が十分に行って、日々精進しております。安心してお任せ下さい。
また機会を見て麻酔科医についてはご紹介させていただきます。

効きやすい神経、効きにくい神経

2020年11月02日

前回『麻酔が効いているかはどうやって調べる?』で神経にはいろいろ種類があることを触れました。繰り返しになりますが以下が麻酔の効きやすさの違いです。

触覚>運動神経>温度覚=痛覚>自律神経
効きにくい効きやすい

一番左側(最も麻酔が効きにくい)にあるのが触覚です。どんなに強い薬を入れても触覚を取ることはできないので、無痛分娩中も触れている感覚は残りますし、帝王切開のように強い薬を入れても触っている感覚だけは感じます。
一番右側(最も麻酔が効きやすい)にあるのが自律神経です。痛みを取ろうとすると、その範囲の自律神経も遮断されます。自律神経は血圧などの調整を行っているため、無痛分娩の副作用に血圧低下があります。血圧低下が起こらないように、十分に点滴などで水分を補うことで予防できます。
自律神経に次いで効きやすい神経が痛覚であり、同じく効きやすい温度覚を参考に無痛分娩中の麻酔範囲を確認します。
運動神経は痛覚よりも効きづらい神経ですので、完全には遮断されませんが、少しだけ効きますので、脚の動かしづらさがでてきます。そのため無痛分娩中は歩行はできません。
これらの神経の特性を理解して無痛分娩を行っております。

麻酔が効いているかはどうやって調べる?

2020年10月26日

無痛分娩で使用される硬膜外鎮痛(麻酔)は全身の痛みを取るのではなく、腹部を中心とする痛みを取り除きます。麻酔が効いて痛みがない場所と、麻酔が効かずに痛みを感じる場所がでてきます。顔、胸の上部、腕は麻酔は効きません(意図的に必要ない場所には効かせません)。胸の下部、腹部、脚やお尻には効きます。
麻酔が効いていれば痛みが取れるわけですが、十分腹部に麻酔が効いているかをどのように我々は判断しているのでしょうか?
神経にはいろいろな神経があります。痛みの神経(痛覚)、運動神経、温度を感じる神経(温度角)、触っている感覚が分かる神経(触覚)、自律神経などがあります。
これらの神経はそれぞれの神経によって麻酔が効きやすい神経、効きにくい神経があります。
順番に並べると以下のようになります。

触覚>運動神経>温度覚=痛覚>自律神経
効きにくい効きやすい
(より詳しい説明は次回『効きやすい神経効きにくい神経』参照してください)

これをみると、痛覚と温度感覚は麻酔の効きやすさが同じです。麻酔の範囲を確認するために痛みを与える方法(ピンプリック法)があります。いろいろな場所に痛みを与えてどこが効いているか効いていないかを見極める方法なのですが、効いていない場所は痛いので、我々は冷たいアイスノンを感じるかどうかで麻酔の範囲を確認します。『冷たい』=『効いていない』、『冷たくない』=『効いている』ということになります。この方法により、十分無痛分娩に必要な範囲の麻酔が効いていれば痛みが取れているという判断になります。 無痛分娩中は何度も冷たいアイスノンを当てて確認を行いますが、それは麻酔の範囲を確認しているからです。痛みを取るために必要なことではありますが、それだけでなく、過剰に効いていないかどうかも分かります。全脊椎麻酔のように麻酔が広がりすぎていないかどうかを知るためにも必要な方法で、安全のためにも行っています。
お臍のあたりまで麻酔が効いていれば、痛みを感じることはなくなるでしょう。麻酔が効きすぎていないかどうかの確認のために、胸のあたりにアイスノンを当てさせていただくこともあります。麻酔が広がりすぎている場合は血圧低下の原因になったり、脊髄くも膜下麻酔になっているサインかもしれません。安全の確認のためですのでご協力ください。

無痛分娩で使用する薬について

2020年09月26日

今回は無痛分娩中に使用する薬剤についてご説明します。
知っておくことで実際に受けた時に安心して出産できると考えております。
 
①アナペイン
局所麻酔薬と呼ばれるものの一つです。神経細胞に働き、痛みの信号を止めてくれます。痛みの信号以外に運動の信号も少し止めてしまうため、軽い脚の動きづらさがでます。脚が痺れる感覚もこの薬が原因です。アナペインはより安全な局所麻酔薬を開発していく中で2001年8月7日本邦で発売となりました。それまでは後述するキシロカインのように運動神経の抑制が強い薬剤や、マーカインと呼ばれる局所麻酔薬は大量投与時に心配される局所麻酔中毒に対し懸念がありました。アナペインはこれらの問題点を解決し、運動神経の抑制は弱く、局所麻酔中毒も重篤化しにくくなりました。

②フェンタニル
医療用麻薬の1つです。手術や癌の疼痛管理として古くから使用されており、妊婦さんに対しても大変多くの使用経験があります。脊髄にある受容体に作用し、痛みの信号を遮断することで鎮痛効果があります。痒み、吐き気などが副作用としてあります。従来局所麻酔薬のみで無痛分娩を行っていましたが、局所麻酔薬単独では濃い濃度を大量に使う必要がありました。ところがフェンタニルを局所麻酔薬に混合して投与することで、局所麻酔薬を薄く少なくすることに成功し(相乗効果といいます)、脚も動きやすく、局所麻酔中毒にもなりにくく安全な無痛分娩を行えるようになりました。

③キシロカイン
本邦で使用される局所麻酔薬としては最も一般的と言われる薬剤で他の局所麻酔薬より歴史も古いため、安全性も高いです。歯科麻酔などでも使用されます。
特徴として早く効いて早く切れるという特徴があります。
無痛分娩では早く痛みを取りたい場合や強い痛みが出た時に使用されます。
また、硬膜外カテーテルを挿入する際の皮膚の麻酔や、硬膜外カテーテルが硬膜外に入っているかを確認するための試験投与にも使用されます。
キシロカインアレルギーがある方は事前にお申し出ください。

④マーカイン
局所麻酔薬の一つで帝王切開の際に脊髄くも膜下麻酔で使用されます。
歴史的にはキシロカインとアナペインの間になります。
アナペインと同様にキシロカインよりも長く作用します。
 
①、②の2薬剤が無痛分娩で多く使用される薬剤で、ほとんどの方がこの2剤の組み合わせだけで痛みが取れます。
多くの使用経験もあり、科学的に妊婦さんにも安全に使用できる薬剤を使用して、出産に臨んでいただきたいと思います。

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